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外資系企業への転職のときにはリファレンスチェックというキーワードをよく耳にするでしょう。リファレンスチェックとは直訳すると身元照会(Reference Check)のことで、これは第三者機関に犯罪歴や家族関係などについての調査を依頼する身辺調査とは異なります。この記事ではリファレンスチェックの目的や内容、方法やリスクなどについて紹介します。
リファレンスチェックとは採用企業が求職者や内定予定者に対して実施する確認作業で、履歴書や面接では確認できなかった内容を調べるためのものです。前職の上司や前々職の上司などに聞くのが基本で、今までの職場での勤務態度がどうであったか、仕事への取り組みや実績がどんな様子だったかなどを調べています。外資系企業ではリファレンスチェックをするのが標準的になっていますが、日系企業でも実施していることがあるということも知っておくと良いでしょう。関連記事:外資系の面接は日系企業となにが違う?特徴や流れを徹底解説
リファレンスチェックはなぜ行われるのかが疑問に感じられる人もいるでしょう。リファレンスチェックには色々な目的があるので簡単に確認しておきましょう。
リファレンスチェックの目的として最も典型的なのが書類や面接による選考をしただけではわからない求職者の人物像を正しく把握することです。書類に書かれているわずかな内容や数十分程度の面接で求職者がどんな人なのかを深く理解するのは容易ではありません。選考の際には大げさな表現をして事実とやや離れた内容を求職者がアピールしている可能性もあるでしょう。リファレンスチェックでは採用プロセスの中で確認できなかったり、あらためて採用を考えたときに確認すべき事項として上がったりしたものを調べています。また、求職者が隠しているつもりはなかったとしても説明していなかったことで気になる点を調べるのも目的です。
リファレンスチェックには能力や人柄といった点でミスマッチが起こるリスクを最小化する目的もあります。今までの職場でどのように仕事で能力を発揮してきたか、人間関係をどのように構築してきたかといった点を確認しているのです。これは入社して間も無く退職してしまうのを防ぐのに重要なことで、退職理由の上位3位に労働条件、人間関係、仕事内容のミスマッチが挙げられています。リファレンスチェックを通して社員と良好な人間関係を築けるか、要求する予定の仕事に適性があるかを確認し、退職リスクを低減させているのです。
企業にとって採用した社員がわずかな期間で辞職するのは大きなリスクです。採用した社員が3か月で離職すると概算では1人当たり187.5万円のコストがかかると言われています。また、採用してからあてがった仕事がミスマッチだった場合には成果が上がらず、むしろ損失を生むリスクがあるでしょう。マッチしない人材を採用してしまうと大きなコストが発生する可能性が高いことから、リファレンスチェックによって企業にとってのリスクの最小化が試みられています。
リファレンスチェックは実際にはどうやって行われているのでしょうか。基本的には情報の客観性を重視するために2人か3人に対して実施されます。一人だけでは個人的な印象によって人物像が偏ったイメージになってしまう可能性があることに加え、実績についても特定の業務についてしか情報を得ることができません。信頼性を得るために複数人からの回答が一致するかを確認しています。ただ、どうやってリファレンスの情報を得ているのかも気になる人もいるでしょう。一般的には求職者が紹介するケースと採用企業が探すケースがあります。
求職者がリファレンス先を紹介するのは一般的なやり方で、履歴書にあらかじめ記載しておく人もいます。ただ、通常は企業からインタビューする相手として適当な人を紹介するように求められます。二人以上で基本的には上司であることが必要というのが通例です。紹介した後は企業が直接やり取りをする仕組みになっています。リファレンスを誰にするかは大きな問題で、誰に頼むかも企業は見ています。そして、そのリファレンスから推薦があれば採用企業からの評価も高まるので、慎重に誰を紹介するかを考えることが必要です。
リファレンスは企業が自ら探すこともよくありますが、基本的には求職者が承諾してからリファレンスチェックが実施されます。候補リストに挙がっていない人は選べないのが原則なので、上司や同僚に依頼できない場合もあります。典型的なのは取引先の人物、社外で一緒に業務をした経験がある人物です。他にも同業他社に応募しているときには業界内でつながりのありそうな人を選ぶこともあります。転職エージェントに委託したり、専用の調査会社に委託して探したりする場合もあるので、応募先の企業によって違うと考えておくのが賢明です。
リファレンスチェックではどんなことが確認されるのでしょうか。代表的な項目について簡単に紹介するので把握しておきましょう。
リファレンスチェックでは勤務条件が確認されます。今までの職場への在籍期間、所属部署、業務内容が典型的な内容です。仕事をする上でどんな能力があるか、アピールしていた内容が正しいかを調べるのが主な目的になっています。
勤務態度の良し悪しや人柄についてもリファレンスチェックで確認されます。遅刻早退や残業などの勤怠状況に加え、一緒に仕事をしたときに受けた印象などをヒアリングするのが一般的です。周囲とのコミュニケーションが良好に行えていたか、リーダーシップがあるか、人柄として周囲への影響力が大きいかなどといった形で人間関係に関しても確認されます。関連記事:リーダーシップとは?マネジメントとの違いやスキルを高める方法
リファレンスチェックでは業務への適性を知るためにスキルについての確認も実施されます。職場でどのような実績を上げてきたかももちろんですが、より細かな点についてもヒアリングされることが珍しくありません。問題への対応力、業務の迅速さ、仕事への責任感などが代表例です。また、また一緒に働きたいと思うかといった端的な質問をすることもあります。他にも企業ごとにどんなスキルを求めるのかが異なり、ビジネス英語を使いこなせるかなど、現場に応じて求められるスキルがあるかを確認されるのが一般的です。関連記事:問題解決能力とは?意味や実際の身につけ方を紹介
リファレンスチェックは限られた時間の中で行われるため、質問のパターンもある程度決まってきます。
勤務条件についての質問例としては、以下のようなものが挙げられます。・勤務期間や職務内容はこちらの内容で間違いありませんか?・以前の勤め先などは聞いていませんか?
勤務態度・人柄については、以下のような質問がよく使われています。・求職者の勤務態度をどのように考えますか?・求職者とまた一緒に働きたいと思いますか?・一言でいうと、どのような人物だと思いますか?・周囲とは問題なくコミュニケーションを取れていましたか?・遅刻や欠勤が目立つことはありませんでしたか?・行動がつかめないと感じたことはありますか?
スキルについての質問例は以下の通りです。・求職者は具体的にどのような実績を上げていますか?・問題解決能力や意思決定力はどうでしたか?・職場にいい影響をもたらしたことがあれば、具体的に教えてください。・改善するべき点はあると思いますか?
外資系企業への転職でリファレンスチェックを受けるときは、いくつかの点に気を付ける必要があります。ここでは、リファレンス先を選ぶときのポイントなどを紹介します。まず、リファレンス先には適切な人物を選ぶことが大切です。外資系企業のリファレンスチェックを外国人が行う場合、日本語でやりとりができないことも珍しくありません。自分の長所を正確に伝えてもらうためにも、リファレンス先はなるべくビジネス英語ができる人に頼むのがよいでしょう。また、英語が不得意な人に外資系のリファレンスチェックを頼むと、相手にも大きな負担がかかります。その他、信頼できる上司や同僚など、リファレンス先の人柄も考慮する必要があります。次に、事前に打ち合わせをしておくことも重要なポイントです。応募している企業の情報を伝えたうえで、どのような話をしてほしいのか、しっかり説明しておくことをおすすめします。なお、リファレンス先には手間をかけることになるため、感謝の気持ちを示しながら丁寧に依頼するのがマナーです。最後に、リファレンスチェックは拒否することもできますが、そのためには相応の理由が必要です。あいまいな理由で断ると経歴詐称などを疑われる恐れがあるので気を付けましょう。
リファレンスチェックの結果によっては内定が取り消されることもあるので注意しましょう。例えば、以前の職場でトラブルや問題行動を起こしていてリスクが高いと考えられたときや、仕事に対する姿勢について悪評がある時などが代表例です。他にも虚偽の内容をアピールしていた時など、多様な理由で不採用になるリスクがあるので注意しましょう。
外資系企業への転職ではリファレンスチェックがほぼ確実に行われます。その対策をしておくのは必須で、円満退職を心がけてリファレンスからの回答ができるだけ良くなるようにしましょう。また、書類や面接では正確な内容を伝えるように心がけ、虚偽の情報が含まれないように気をつけるのが必須です。リファレンスチェックが重視されていることを念頭に置いて十分な対策を立てておきましょう。
【2020年3月23日公開 - 2023年6月16日更新】
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