IT業界はなぜ人材不足?理由や人事・採用担当がとるべき対策について解説

生産年齢人口の減少により、IT業界における人材不足は年々深刻化しています。競争力や生産性を維持するためにも、多くの企業が早急に対応せざるを得ない状況にあります。

さまざまな産業分野でIoTやDX、AIを導入する取り組みが盛んになっている昨今、IT人材の確保は急務であり、適切な対策を講じることが必要です。

本記事では、IT人材不足の現状、IT人材の定義、企業が求めているIT人材のスキル、IT人材が不足する理由などを解説します。さらに、企業ができるIT人材不足への対策と、今後需要が高まるIT人材一覧も紹介します。
 

1. 日本のIT人材不足の現状は?経済産業省のデータをもとに解説

1. 日本のIT人材不足の現状は?経済産業省のデータをもとに解説

経済産業省のデータによれば、日本のIT人材不足は今後さらに深刻化すると予測され、2030年には最大約79万人ものIT人材が不足する見込みです。

この背景には、ITニーズの急速な増加とそれに伴う需給ギャップの拡大があります。また、IT業界における人材の高齢化も放置できない課題です。

各業界でデジタル化が進む中で、企業にとって若手IT人材の育成と確保が急務となっています。
 

2. そもそもIT人材とは?

2. そもそもIT人材とは?

IT人材には、従来のシステムエンジニアやプログラマー以外に、ISアナリスト、AIエンジニアといった新しい職種が登場しています。ここでは、従来型IT人材、高度IT人材、先端IT人材の3つに分類して、それぞれ解説します。

2-1. 従来型IT人材(システムエンジニアなど)

従来型IT人材とは、システムエンジニア(SE)やプログラマーのことで、主にITツールの運用・保守、あるいはシステムの請負開発を行う人材を指します。

システムエンジニアは、顧客の要望に応じたシステムの設計・開発を担当し、要件定義や仕様設計、プログラミング、テストまで一貫して行います。システムエンジニアが設計した仕様に基づき、実際のプログラムコードを書く役割を担うのがプログラマーです。

従来型IT人材は、IT基盤の維持や業務効率化のためのシステム開発を支える重要な存在ですが、近年の急速な技術進化により、AIやクラウド技術、セキュリティ対策といった新たなスキルセットの習得も求められるようになってきています。

2-2. 高度IT人材(ISアナリストなど)

高度IT人材とは、ITを他の産業と結びつけ、新たな商品・サービスを創出したり組織の強化を図ったりするなど、ITの戦略的活用を実現できる人材のことです。経営戦略の立案を行うIS(Information System)アナリストやコンサルタント、企業の生産性向上を目的としたITアーキテクトやスペシャリストが該当します。

これらの職種は、業務プロセスの最適化やシステムの統合、企業の競争力を高めるためのデジタル変革を推進します。ソフトウェア開発やITサービスマネジメントなどにも関わり、さまざまな側面から企業価値の向上に貢献できる存在です。高度IT人材は単なる技術者にとどまらず、経営に直結する重要な役割を担い、戦略的なIT導入をリードします。

2-3. 先端IT人材(AIエンジニアなど)

先端IT人材とは、AIや機械学習、IoTなどの最先端技術を理解し、実際に活用できる高度なスキルを持つ人材を指します。AIエンジニアやデータサイエンティスト、クラウドエンジニアなどが該当し、ビッグデータの解析から、予測モデルの構築、意思決定支援まで、企業のデジタルトランスフォーメーションを推進する職種です。

AIエンジニアは、特にAIアルゴリズムの開発や機械学習モデルの設計・実装に特化しており、業界を超えて広がるAI技術の応用をリードします。また、クラウドエンジニアは、企業のITインフラをクラウド環境に移行する際に最適化を行い、クラウドベースのサービスを通じてコスト削減や柔軟なスケーラビリティを実現します。

これらの先端IT人材は、企業のデジタル変革を支える中核的な存在であり、次世代の技術革新を推進するために不可欠です。
 

3. 不足状況が深刻なIT人材3つ

3. 不足状況が深刻なIT人材3つ

IT人材の中でも、職種によって需要に差があります。ここでは、不足状況が特に深刻になっている「先端IT人材」「AI人材」「情報セキュリティ人材」について解説します。

関連記事:「なぜIT業界は終わってると言われるのか?その理由と今後の動向」

3-1. 先端IT人材

DXの推進が企業にとって重要課題となる中、これを担う「先端IT人材」のニーズが急速に高まっています

先端IT人材は、AI、ビッグデータ、IoT、クラウドコンピューティングなど、最新のデジタル技術を駆使して業務プロセスの改善やビジネスモデルの革新につなげる人材です。DXを推進して企業の競争力を強化するには、既存システムの枠を超えた新しい技術を導入する必要があります。そのためには、先端IT人材を確保しなければなりません。

しかし、経済産業省の報告書によれば、2030年には40万〜80万人規模の人材不足が生じると試算されています。企業が競争優位を確立するためには、先端IT人材の育成と確保が不可欠であり、ますます重要な課題となっていくでしょう。

3-2. AI人材

AI技術の急速な進歩とそのブームに伴い、AI人材の需要が高まっています。業務の効率化やデータ分析、予測モデリングなど、多くの分野でAI活用が図られ、革新的な成果を挙げています。今後もAIの応用範囲は拡大の一途をたどるでしょう。

今や多くの企業が、AI技術を活用した新たなビジネスモデルやサービスの創出を目指しています。しかし、AIに特化したスキルを持つ人材はそれほど多くありません。経済産業省の報告書では、将来的にAI人材が大幅に不足することが指摘されています。

AI分野での競争が激化する中、企業が優秀なAI人材を確保することは、生産性の向上や市場競争力の維持に不可欠な要素となりつつあります。

3-3. 情報セキュリティ人材

DXを推進する人材と同様に、情報セキュリティ人材も急速に需要が高まっており、人材不足が深刻となっています。

企業のデジタル化が進むにつれて、ランサムウェアなどによるサイバー攻撃を受けるリスクが増大しているためです。企業の情報資産を守るためには、システム全体を俯瞰して適切な対策が行える情報セキュリティ人材が必要です。

経済産業省の報告書でも、2016年の時点で情報セキュリティ人材は13万人以上の不足が指摘されています。実際に、多くの企業が優秀なセキュリティエンジニアやセキュリティアナリストを確保するのに苦労しています。ステークホルダーからの信頼を得るためにも、情報セキュリティ人材の育成と確保に取り組まなければならないでしょう。
 

4. 企業が求めているIT人材のスキル

4. 企業が求めているIT人材のスキル

企業が求めるIT人材のスキルは、プログラミングだけではありません。

近年では、AIやクラウド、データ分析などの先端技術領域のスキルが重視されており、これらを活用したデジタル戦略の推進が期待されています。さらに、プロジェクトやタスクを効率的に管理できるマネジメントスキル、チームで円滑に業務を進めるためのコミュニケーション能力も求められています。

業務に関連する専門知識の他、デザイン思考に基づいたビジネス企画力も重要です。また、英語力STEAM領域(科学・技術・工学・芸術・数学)のスキルも、企業のグローバル展開やイノベーションに貢献する能力といえます。
 

5. IT業界の人材不足はなぜ起こる?理由を解説

5. IT業界の人材不足はなぜ起こる?理由を解説

IT業界の人材不足が起こる理由として、「IT需要の拡大」「少子高齢化による労働人口の減少」「IT技術の進歩」「レガシーシステムへの対応」の4つが挙げられます。以下、それぞれの理由について解説します。

5-1. IT技術の急速な広まり

近年、リモートワークやオンライン会議の普及により、企業におけるIT技術の導入が急速に進んでいます。

新型コロナウイルスの影響で働き方が大きく変化したことも、その要因といえるでしょう。テレワークの導入や業務の効率化、コミュニケーションの円滑化などを実現するために、クラウドサービスやセキュリティソリューションといったIT技術が広く浸透しました。

また、DX化の達成度が市場競争力を左右する要素となりつつあります。多くの企業が先端IT技術を活用し、新たなビジネスモデルの構築やサービスの提供に注力しています。AIやIoT、クラウド、ビッグデータなどを扱える先端IT人材の需要が特に高まっており、いかに人材を獲得するかが人事戦略上の重要な課題です。

5-2. 少子高齢化による生産年齢人口の減少

少子高齢化による労働人口の減少は、IT業界の人材不足に拍車をかける要因の一つです。若年層の減少によってIT業界への新規参入者が少なくなり、若手IT人材の確保が難しくなっています。その上、現役IT人材の高齢化が進んでおり、将来的には多くが定年を迎えて退職していきます。

このような状況では、企業のデジタル化を支えるIT人材の供給が追いつかなくなるのは必然です。このままではIT人材不足の改善は見込めず、ますます深刻化することが予想されます。

労働市場全体における人材獲得競争が激化する中で、企業はIT人材の育成と早期確保のために有効な人事施策を打ち出さなければなりません。

5-3. IT技術の進歩の速さ

IT技術が日々進歩している一方で、その進化スピードに企業の知識やスキルが追いついていないといった問題があります。AIやクラウドサービス、ブロックチェーン、データサイエンスといった最先端技術を取り入れるためには、これらを扱える人材の育成・確保が必須です。

そのためには、ITの教育・研修体制やトレーニングプログラムの整備、継続的なスキルアップの支援、学習機会の提供といった仕組みづくりが求められます。さらに、モチベーションを高めるためのキャリアパス設計や評価制度の充実も大切です。

IT人材の確保と定着を図る取り組みを続けていれば、IT技術の進歩に遅れることはないでしょう。

5-4. レガシーシステムの運用・保守

レガシーシステムとは、老朽化や肥大化、複雑化、さらにはブラックボックス化したシステムを指します。具体的には、1980年代に多くの企業が導入したメインフレームや、その後登場したオフィスコンピューターなどを使用したシステムのことです。

これらのシステムは、最新のデジタル技術に対応できず、システム障害などのトラブルが発生しやすいという課題があります。

レガシーシステムを理解し、運用・保守できるIT人材は限られており、彼らが対応にあたることで貴重なIT人材のリソースが割かれてしまっているのが現状です。レガシーシステムから脱却することにより、IT領域の人材不足を劇的に改善できる可能性があります。
 

6. 企業ができるIT人材不足への対策

6. 企業ができるIT人材不足への対策

IT人材の不足にあたって、採用強化や定着率の向上、外部人材の活用、人材育成・リスキリングなどの対策をとることができます。また、海外IT企業の力を借りるオフショア開発も有力です。以下、それぞれの対策について解説します。

6-1. 採用活動を強化する

IT人材不足への対策として、まずは採用活動を強化することから取り組みましょう。

ただし、求職者のニーズをよく理解しておかなければ、適切な採用戦略を立てられません。求職者が求めるスキルやキャリアパス、労働条件をよくリサーチして、魅力的な求人を提供することが大切です。

また、転職市場の動向を把握し、市場の変化に応じた採用活動を実施することも求められます。

6-2. 定着率を向上させる

IT人材の定着率を向上させるためには、企業と候補者のミスマッチを減らさなければなりません。

採用基準を明確にし、候補者が企業文化や仕事内容に適合するかを見極めることで、早期退職を防ぐことができます。カジュアル面談を実施し、候補者がリラックスした状態で本音を話す場を提供するのも、相互理解を深めるのに有効な方法です。

6-3. 派遣などの外部人材を活用する

IT人材不足への対策として、派遣やフリーランス、アウトソーシングなどの外部人材を活用する方法も有効です。経験のある派遣社員を採用すれば教育コストがかからず、業務内容や業務量に応じた契約を結べるため、人件費の削減にもつながります。

専門知識やスキルを持つ外部人材を適切に活用することで、企業のリソースを効率的に補完し、IT業務を円滑に進められます。

6-4. 人材育成やリスキリングに力を入れる

自社でIT人材を育成し、IT人材不足の解消を図ることもできます。自社の事業や業務に詳しい人材を育成することで、業務やプロジェクトが円滑に進みやすくなるでしょう。従業員自身も仕事の幅が広がり、モチベーションが向上します。

IT人材の育成には、時間や場所に制約されずに学べるe-learning(eラーニング)が効果的です。また、非IT職種の従業員がリスキリングできる体制を整えて、IT人材不足の解消を試みている企業もあります。

6-5. オフショア開発を利用する

オフショア開発とは、システムおよびソフト. ウエア開発の一部、または全てを海外の企業に委託する開発手法です。IT人材不足に有効で、コスト削減にもつながります。

ただし、海外企業との連携に慣れていないと、トラブルも発生しやすいです。国による違いが生じにくいシステムの作成案件や、納期に余裕があってスケジュール管理がしやすい案件の場合に検討してみると良いでしょう。
 

7. 今後需要が高まるIT人材一覧

7. 今後需要が高まるIT人材一覧

これから需要が高まるIT人材について、職種と仕事内容、需要が高まる理由をまとめました。

  • ITエンジニア

仕事内容:システムやソフト. ウエアの設計・開発、運用・保守を行う。プログラミングやインフラ構築、セキュリティ対策など。

需要が高まる理由:DX推進に伴い、システムの開発や運用に必要なスキルを持つ人材の需要が増加。新たな技術やフレームワークを活用できるエンジニアが特に求められている。

関連記事:「ITエンジニアはどんな種類がある?仕事内容、年収、適性を解説」

  • データサイエンティスト

仕事内容:ビッグデータを分析し、解析結果に基づくビジネス戦略の立案や意思決定を支援する。機械学習モデルの構築や予測分析も行う。

需要が高まる理由:データ駆動型の意思決定が重視されるようになり、データ分析のスキルを持つ人材が不足。AIやIoTの発展も需要を後押ししている。

  • Webマーケター/デジタルマーケター

仕事内容:Web広告やSNS、SEO対策などを活用し、オンライン上での集客や販売促進を行う。データ分析を通じてマーケティング戦略を最適化。

需要が高まる理由:ECサイトの拡大やデジタルマーケティングの需要増加に伴い、Web集客やコンバージョン最適化のスキルを持つ人材の必要性が高まっている。

  • Webデザイナー/UI/UXデザイナー

仕事内容:WebサイトやWebアプリケーションのデザイン、操作性、ユーザー体験の設計を行う。

需要が高まる理由:デジタル製品のユーザー体験を向上させるため、優れたユーザビリティを実現する設計スキルが必要とされている。

関連記事:「UI/UXデザイナーの仕事とは?将来性や年収も紹介」

  • ITコンサルタント

仕事内容:クライアント企業に対するIT戦略の策定やシステム導入の支援。業務改善やDX推進のためのアドバイスも行う。

需要が高まる理由:DXの推進やITインフラの刷新を図る企業が増えており、業務改善やシステム導入について、専門的な知見からのアドバイスが求められている。

関連記事:「【必見】ITコンサルタントになるには?必要な経験やスキルを徹底解説!」
 

IT業界の人材不足:現状と企業が取るべき対策

8. まとめ

本記事では、IT業界における人材不足の現状や人材不足となる理由、企業が取るべき対策などについて解説しました。IT需要の拡大や少子高齢化、技術の進歩といった複数の要因が重なり、IT人材不足は深刻な状況となっています。IT人材不足の現状を把握し、人材不足への対策に早くから取り組むことが重要です。

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