スーツの人物が矢印付きのデジタルクラウドアイコンを持っている。

ビジネスのIT化が進むに連れて企業が扱う情報量は増え続け、システムやデータの運用に様々な課題点が指摘されています。システムやデータのクラウド化はそういった課題の解決に効果が期待されており、導入を進める企業も少なくありません。そしてクラウド技術の担い手として、クラウドアーキテクトと呼ばれる職種に注目が集まっています。今回はクラウドアーキテクトの仕事内容・将来性・役立つ資格などについて見ていきましょう。
 

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1.クラウドアーキテクトとは?

クラウドアーキテクトとは企業のクラウドインフラストラクチャ、およびコンピューティング戦略を担当する職種です。つまり企業がクラウドを利用してシステム・アプリ開発を行うための環境を整え、その運用や戦略的展開を担う立場であると言えます。クラウドに特化したITアーキテクト・ソリューションアーキテクトと言い換えても良いでしょう。企業が情報を効率的に活用するためのコンピューティング戦略においても監督責任を負う人材です。

クラウドアーキテクトは、ソフトウェア開発から派生したIT分野の中でも新しい職種とされています。企業が事業活動で扱うデータ量は年々増え続けており、管理コストや容量の拡張性に頭を悩ませる企業も少なくありません。システム稼働やインフラ構築に必要なサーバー・ネットワーク機器・ソフトウェアなどを自社内で保有して運用するスタイルを「オンプレミス型」と呼びます。ビジネスシーンでは従来のオンプレミス型からクラウド型に移行、もしくは併用して課題を解決しようという流れが出来ているのです。システムのクラウド化にあたって、オンプレミスで運用していたソフトウェアをクラウド環境下で動作するように調整する必要があります。その作業を請け負うのがクラウドアーキテクトなのです。

クラウドアーキテクトの仕事は既存のオンプレミス型システムを利用している、あるいはシステム未導入の企業に対してクラウドシステム導入の計画を立案するところから始まります。システムのクラウド化や既存システムのクラウド環境対応に至るまでのロードマップを作成し、管理者やクライアントの合意を得るのが基本です。合意が得られたら、まずはクラウド環境で動作するアプリケーションソフトの設計に着手します。クラウドベースのアプリを作成した後、企業がそれを展開して現場で活用出来るようにサポートするのも重要な仕事です。さらに言えば導入したシステムが適切に動作するように、クラウド環境を管理・監視して必要であれば適宜手を加えて整備します。

このようにクラウドアーキテクトの仕事はクラウド導入の計画段階から導入後のケアまで継続します。一口にクラウドと言っても運用方法によって「パブリッククラウド」「プライベートクラウド」「ハイブリッドクラウド」など種類は様々です。クラウドアーキテクトはどのようなクラウド環境にも対応するエキスパートとしての仕事が求められます。

2.クラウドアーキテクトはなぜ必要?

ビジネスツールや情報のデジタル化に伴って、オンプレミス型システムを使用していた企業の間ではクラウド化の流れが進んでいます。これはシステムが同じように動作するのであれば、オンプレミスで使い続けるよりもクラウド化した方がメリットが多いためです。例えばオンプレミス型は自前でサーバーを用意する必要があり、導入費用だけでも相応の金額になります。サーバーにトラブルが起きればシステムが利用出来なくなってしまうため、定期的なメンテナンスも欠かせません。サーバーメンテナンスには高い専門性が要求されるため、専門要員を用意するイニシャルコスト・ランニングコストもかかってきます。システムを構築するサーバーを自社で用意・管理するのは、資金面に余裕のある大企業でない限り難しかったのです。

クラウド型の場合はインターネット上にデータを保存するため、自社内にサーバーを用意する必要がありません。ベンダーが提供しているパブリッククラウドを従量課金で利用する事が出来るので、サーバー管理の手間隙や導入コストの削減が可能です。コストパフォーマンスに優れたクラウド型であれば、中小企業やスタートアップ企業でも独自の業務システムを構築出来るようになりました。

クラウドアーキテクトは企業が抱える課題をシステムのクラウド化によって解決するため、目的に適したクラウドタイプの選定・クラウドアプリの開発・管理運用までを請け負います。企業はコストを抑えてクラウドアプリを導入出来るだけでなく、専門知識を備えた人材に管理・監視業務まで任せられるのです。

3.クラウドアーキテクトに将来性はあるの?

クラウドアーキテクトの需要は企業のクラウド移行が進む間は続くと予想されています。しかしそれだけではなく、クラウド移行が完了した後でもクラウドアーキテクトは企業から必要とされる人材です。前述の通り、クラウドアーキテクトはクラウドの選定・システムやアプリケーション計画と提案・デザイン・管理監視などシステムのクラウド化に必要な工程をトータルで請け負います。システムの最適化やアップデートを行う定期メンテナンスの必要性を鑑みれば、クラウドアーキテクトの需要は無くならないと言えるでしょう。

IT環境構築の担い手としてはITアーキテクトという職種が活躍していました。元々ITアーキテクトは人材が不足している職種でしたが、クラウドアーキテクトはさらに専門性を高めた職種である事から人材育成のスピードが需要に追いついていません。需要が供給を上回る状態は今後もしばらく続くと予想されているため、クラウドアーキテクトは将来性の高い職種です。

しかしその一方で、クラウドアーキテクトとして活躍し続けるためには継続的な努力が重要になります。クラウド技術は新しめのツールであり、新しい技術の開発や法律の整備は今後も盛んに行われるでしょう。企業から必要とされる人材であり続けるには、新しい技術や知識にアンテナを張って使いこなせるようにしておく必要があるでしょう。企業がクラウド運用に慣れてからはシステムの見直しや最適化のサイクルが短縮される事が予想されており、そうなればクラウドアーキテクトの需要はさらに高まっていきます。

4.クラウドアーキテクトの年収はいくら?

求人をチェックしてみると、クラウドアーキテクトの年収は500万~1800万円と大きな開きがある事が分かります。企業の方針や業務に求められる知識・スキル、さらには前職での経験などを総合的に判断して年収が提示されていると考えられるでしょう。また、クラウドアーキテクトは業務内容や必要な知識を考慮するとクラウドエンジニアの上位職と捉える事が出来ます。もう少し見方を変えるとクラウドに特化したITアーキテクトがクラウドアーキテクトであるとも考えられるでしょう。クラウドエンジニアの平均年収は約600万円、ITアーキテクトの平均年収が約750万円となっているためクラウドアーキテクトの年収はそれ以上となる可能性が高いです。転職直後はクラウドアーキテクトとしての実績がないためそこまで年収は高くないというケースもありますが、2年目・3年目から年収を上げていく事は十分可能でしょう。

5.クラウドアーキテクトに求められるスキルとは?

クラウドアーキテクトの業務範囲は幅広く、スムーズに仕事をこなすためには様々なスキルが求められます。特に重要なスキルを以下に3つ紹介していくので参考にしてみてください。

5-1.ITシステムに関する知識

クラウドアーキテクトはクラウド特化型のIT専門家として企業に関わっていく事になります。エンジニアとしてITシステムに関する知識が必要なのはもちろんですが、特に企業レベルの規模で使用するシステムについて理解を深めておく事が重要です。クラウドアーキテクトは大規模システムの仕組みや運用方法を正確に把握する事で、初めて企業に企画・計画を提案出来るようになります。企業レベルのシステムに関する知識は、クラウドアーキテクトとして働き始める以前の経験によって養われるものです。通常、新卒入社の社員がいきなりクラウドアーキテクトに抜擢される事はありません。最新情報には常にアンテナを張り巡らせ、これまでの経験で得た情報・知識は常に更新しておく姿勢が求められます。

5-2.テクニカルコンピテンシー

クラウドアーキテクトは幅広いテクニカルコンピテンシーを備え、知識やスキルを適切に運用し続ける事が求められます。従来のオンプレミス型システムをクラウド化するにあたって、どのような変化が起きるのかが分かっていないと企業に企画提案する事は出来ません。プログラミング言語やアプリケーション開発についてはもちろん、データベース・ビッグデータなどの先端技術についても十分な技術力を備えておく必要があるのです。コンテナについては「Docker」や「Kubernetes」の知識を使いこなせるだけのテクニカルコンピテンシーが求められます。さらに言えばWebサイトやコンテンツ制作の技術、ハイブリッドおよびマルチクラウドソリューションの最適化といった高度な専門技術への理解も必要です。

5-3.コミュニケーション能力

クラウドアーキテクトにとってはビジネスマンの基礎であるコミュニケーション能力も重要なスキルです。クラウドアーキテクトは自身が専門知識を持っていればそれで良いという訳ではありません。クライアントや企業経営者など技術者以外の人と話す機会も多く、その際にはITの専門知識を分かりやすい言葉で丁寧に説明する必要があります。また、クラウドアーキテクトはクラウド専門要員としてチームに組み込まれる事が多いです。チームメイトと共にスムーズに仕事を進めていくためにも、コミュニケーション能力が必要になります。企業としては個人作業よりも周囲との協力関係によって目標を達成出来る人材をクラウドアーキテクトとして起用したいところです。クラウドアーキテクトは時としてチームを引っ張るリーダーシップや、プロジェクトマネジメント力も期待されます。

6.クラウドアーキテクトに役立つ資格とは?

クラウドアーキテクトの仕事は専門性が高いため、クラウド関連の資格を得る事で転職前に実力を付けておきたいところです。クラウドサービスを提供している事業者は多いですが、その中でも「AWS」「Google Cloud」「Microsoft」は3大パブリッククラウドとして知られています。これら3つのパブリッククラウドではそれぞれ認定資格を設けているので、転職活動までに取得しておくのがおすすめです。実務的なスキルを証明するためには、クラウド環境下でのシステム設計・構築および運用に関わる資格が良いでしょう。そういった意味では、「AWS認定ソリューションアーキテクト-アソシエイト」「AWS認定ソリューションアーキテクト-プロフェッショナルレベル」の2つが効果的です。

クラウドアーキテクトとして転職するには

クラウドアーキテクトは高い需要と年収相場から見ても将来性が高く、魅力的な職種であると言えます。しかし比較的新しい職種である事と専門性の高さから、市場での求人数はそう多くありません。効率的にクラウドアーキテクトの求人を探すには、マイケル・ペイジのようなIT系や外資系の求人に強い求人サービスを利用するのがおすすめです。
 

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