明るい部屋で会話を楽しむ4人のグループ。

新しい社会貢献の形として、「プロボノ」と呼ばれる活動が世界中で注目を集めています。プロボノ、という文字列を一見しても、どのような活動なのかを窺い知ることはできません。一体プロボノなる活動の正体とは何なのでしょうか。今回は、プロボノがどのような活動で、何故世界的な人気を集めているのか、プロボノに参加するにはどうすればよいかについて解説します。

1.プロボノとは?

プロボノという言葉は、ラテン語で「Pro Bono Publico」が語源となっています。このラテン語の意味は「公共善のために」で、より噛み砕いて言えば「世のため人のため」といった意味合いです。即ち「プロボノ」は、社会的、公共的に貢献すべく、職業上の専門的なスキルや知識を用いて行うボランティア活動を一言で言い表した言葉なのです。もちろんボランティア活動の一形態にあたりますから、報酬が出ることはありません。

2.世界や日本でのプロボノの広がり

プロボノの起源を辿っていくと、アメリカやイギリスにおいて、弁護士など法曹界で働く人々が無報酬で取り組む公益事業に行き着きます。弁護士費用を払うのが困難な人に対して無償で法律相談に応じたり、非営利組織の法務支援を行ったりするなど、様々な形で法律の専門スキルを活かした社会貢献活動を行うという動きが、1980年頃から急速に広まってゆきました。アメリカ法曹協会も年間50時間以上のプロボノ活動を推奨しており、法曹界全体がプロボノ活動に積極的に取り組んでいることが伺えます。

2000年代、それまで法曹界でのみ行われていたプロボノに転機が訪れます。2001年には米国で、2002年にはフランスで、それぞれプロボノ活動の新たな定義を提唱する団体が結成されました。これらの団体が提唱したプロボノの新定義とは、「従来の法律関係のみならず、マーケティング、IT、デザイン、経営戦略、人事などのビジネスに関わるあらゆる専門スキルを活かしたボランティアこそがプロボノである」、というものです。これ以降、プロボノは法曹界のみならず、様々な業界に広まっていきます。

日本では、2009年頃から注目が集まり始めました。2011年の東日本大震災においては、復興支援の一環として弁護士や公認会計士、中小企業診断士などが手弁当で被災地域に出向いて地元企業や商店街の復興を支援するなど、日本でもプロボノは徐々に認知度を広げてきています。

3.プロボノの業務内容

プロボノの業務内容は膨大で、職業それぞれの専門スキルを活かした業務全てがプロボノになりうると言っても過言ではありません。例えば、ITエンジニアは普段クライアントからの依頼を受けてシステムの設計や開発を行い、その対価として報酬を得ていますが、大規模災害に被災した地域の企業を復興させるべく、報酬を受け取らずにシステムの設計や開発を請け負った場合、その活動は立派なプロボノと言えるのです。

元々プロボノが行われていた弁護士をはじめとして、公認会計士、中小企業診断士、コンサルタント、金融、営業、マネジメント、広告・クリエイティブ、システム・IT系、調査・分析系などの職種の人が、プロボノとして自身の職業スキルや経験を活かした活動を行っています。WEBデザイン、ライター、動画編集、WEBマーケティング、財務管理、エンジニアなど、プロボノ活動としての業務内容も多岐にわたりますが、いずれも通常の対価を受け取って行う仕事と大きな違いはありません。このことから「普段対価を受け取って行っている業務を、社会貢献活動として無償で行う」のがプロボノ活動と言えるでしょう。

4.プロボノが人気を集める理由

全世界で注目を集めているプロボノですが、ここまでの人気を獲得するに至ったのには理由があります。プロボノ活動を行うことで何かしらのメリットを享受できるからこそ、プロボノは多くの人の心を引きつけるのです。以下では、プロボノが人気を集める理由、即ちプロボノ活動を行うことによるメリットについて解説します。

4-1.スキルアップができる

プロボノでは、普段の業務では関わることが少ない同業他社や異業種の人とチームを組んで仕事をすることになります。これは即ち、普段の仕事とは異なるアプローチで仕事をしたり、自分と異なる方法論に触れたりすることで知見を広げるまたとない機会です。さらに、無報酬であることから、求められるスキルのハードルは大きく下がるため、これから成長させていきたいスキルを伸ばしていくチャンスでもあります。既存のスキルを伸ばし、新たなスキルを獲得するということ自体が、プロボノ活動を行う対価として得られる恩恵の一つなのです。

4-2.パラレルキャリアになる

会社勤めの人が、仕事以外の活動としてプロボノを始めるというケースもあります。無報酬であることから、副業禁止の職場に勤めている人でも始めやすい活動であり、なおかつ活動の内容は普段の仕事と同等であるため社外でキャリアを積むことが可能なのです。本業とは別にキャリアを持っている状態をパラレルキャリアと呼びます。パラレルキャリアになると、本業側で突然失職したとしても、早い段階で次の職場を探すためのアクションを起こすことが可能です。終身雇用がない時代において、パラレルキャリアは有効なリスクヘッジのため、会社勤めの人の注目度が高いことも頷けます。

4-3.人脈ができる

社外の人と共にプロボノとして仕事をすることで、本業とは別の人脈が生まれます。また、普段の仕事とは異なる人との仕事によって視野も広がり、新たな価値観の存在を学ぶことも可能です。その結果、よりニュートラルに物事を考えられるようになります。もちろん、この「本業とは別の人脈」は、本業において新たなビジネスチャンスに繋げるための道具になる点は見逃せません。何より、転職を行ったり、独立して起業したりする際にはこの人脈こそが強力な武器として活用できるという点も注目に値します。

4-4.社会貢献による満足感や達成感が得られる

これまで何度も述べてきたように、プロボノは社会貢献活動です。金銭的な報酬は得られないものの、その活動は社会全体の利益に資するものと言えます。人に直接役立つことができるプロボノ活動は、通常の仕事とはまた別種の満足感や達成感を得ることが可能です。さらに、会社組織のしがらみに囚われない状態で自分のスキルを活かしたり、成長させたりすることで、それまで気づくことのなかった本当の自分の姿を発見することもできます。
 

5.プロボノに参加する方法

さて、「自分もプロボノに参加してみたい」と考える人にとって、気になるのはプロボノ活動を始めるための「入り口」です。果たして、どうやってプロボノに参加すればよいのでしょうか。以下ではプロボノに参加するための手段を2つ紹介します。

5-1.マッチングサイトに登録

プロボノ参加を始めるにあたって、最初のうちはプログラム型のプロボノに参加することをおすすめします。プログラムが決められていて考えることが少ないため、進めやすく、成功しやすいのがその理由です。また、プログラム型に参加していく中でプロボノの仕組みや、大まかな進め方について徐々に学んでいくことができます。「認定NPO法人サービスグラント」などが運営するマッチングサイトでは、自分のスキルを登録しておくとプロボノ活動として働く場所を探すことが可能です。プロボノ活動をしたい人と、プロボノの手を借りたい企業や個人を仲介する、求人サイトのような役目をイメージすると良いでしょう。

マッチングサイトに登録した後は、説明会に参加してプロボノに関する知識を学び、マッチングサイト側から提示されたプロボノを募集している団体の中から気になるところに応募して、実際にプロボノ活動を行い、支援先の団体に成果物を提出してプロジェクトを終える、という一連の流れを繰り返すことになります。プロボノ活動の経験を徐々に積んでいくならば、マッチングサイトに登録してプログラム型のプロボノ参加を繰り返していくのがおすすめです。

5-2.自分で企業やNPO法人を探す

ある程度プロボノ活動に慣れてきた人は、自分でプロボノを募集している団体を探すのも手です。参加したい職種のキーワードと「プロボノ」あるいは「ボランティア」の語を使ってWeb検索すると、マッチングサイトに頼らず独自にプロボノを募集している企業やNPO法人が見つかります。それらの団体に対して所定の方法で応募し、参加していくという流れになります。

プログラム型と違い、自分で見つけ出して参加する方法の最大の強みが、自由度の高さです。興味のある団体を自発的に調べて参加することができる上に、参加した先でも自分のやりたいことを好きなようにさせてもらえる可能性があります。プログラム型で物足りなくなってきた人にとっては、自分でプロボノ活動の場を探す方法に挑戦するのがおすすめです。
 

プロボノに参加してスキルアップしよう

終身雇用の概念が形骸化し、働き方が多彩になりつつある時代において、プロボノはリスクヘッジやスキルアップ、人脈構築などの様々な利点から注目度が高まってきています。無報酬であるが故に、ハードルが低く挑戦しやすいことも特徴のひとつです。プロボノ活動に参加して、スキルアップや新たな人脈の構築に挑戦してみてはいかがでしょうか。

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