日本における女性の労働環境は、今後大きく改善する可能性があると言われています。こうした変化に影響を与えると言われているのが、女性活躍推進法です。この法律は、女性がより働きやすい職場環境を整えることを目的に制定されました。ここでは、女性活躍推進法の影響によって、どれくらい企業で女性の活躍が推進されているか、その現状や背景について、詳しく紹介したいと思います。
 

1.女性活躍が推進されている背景とは?

職場における女性の活躍が改めて推進されているのは、これまでに実施された施策の効果とも、大きく関係しています。日本では、1985年に制定された男女雇用機会均等法をはじめとして、女性の職場における労働環境の改善を目的とした、いくつかの法令が施行されてきました。ですが、こうした法令で定められた目標数値と、現実の職場における女性進出の差はなかなか埋まることがなかったため、さらなる改善の必要性が認識されていました。

女性の正社員再雇用の環境が整備されていない

日本において、職場における女性の活躍が目覚ましくないのは、定年まで働く女性の数が少ないことも、大きな理由としてあげられています。日本の女性の場合、結婚や妊娠などをきっかけにして仕事を辞めるケースも多く、実際に50パーセント程度の女性がこうした理由をきっかけにして仕事を辞めているというデータもあります。子育ての負担が軽くなった時期に再就職を考える女性も少なくないですが、こうした再就職時における女性の雇用形態も、日本において職場における女性の活躍を妨げる原因になっていると言われています。仕事を辞める前は正社員として働いていた女性でも、仕事を再開するときにはアルバイトやパートなどの非正規の社員として雇用されることも珍しくないからです。

少子高齢化の労働力不足の解決策として

日本における生産年齢人口の減少も、女性の活躍が推進されている理由としてあげられています。少子高齢化が進行している21世紀の日本では、今後就業者数の数が大幅に減少するという予測もされていますが、こうした労働力の不足を解消するための貴重な労働力として期待されているのが女性や高齢者です。

世界に遅れをとる日本の男女平等

より国際的な視点から、職場における女性活躍が推進されるべきだという意見もあります。2021年3月に世界経済フォーラムが発表したジェンダーギャップ指数で、日本は156ヶ国中120位(G7最下位)でした。

日本は諸外国と比較して、女性と男性の賃金の差が大きいことが調査により分かっていますが、こうした賃金格差の理由の一つとなっているのが、日本における女性管理職や役員数の少なさです。管理職や役員の報酬は一般的に高額であることから、男性と女性の平均的な収入差を広げる一因になっていると考えられています。このような状況を改善する目的でも、政府では女性の就業継続や女性管理職の増加を推進しています。
 

2.企業における女性の活躍推進の現状とは?

職場における女性の活躍が強く推進されているにもかかわらず、現実の世界ではさまざまな問題が浮上しています。女性の活躍推進に関する企業の態度も問題視されることが多く、意図や意義を明らかにしないままで、女性活躍を推進している企業も珍しくありません。

ロールモデルとなる女性管理職が少ない

ロールモデルが少ないことも、職場における女性の活躍が思うように実現していないことの理由として指摘されています。管理職という仕事に関し、残業時間が多いことや、緊急事態に対応できる管理能力が必要になるといったイメージだけを持っている女性が多いのが現状です。働く女性の目標になるような女性管理職がいる職場ならば、管理職を希望する女性の数も増加する可能性がありますが、こうした女性の数が少ないことが、管理職になることを希望しない女性の数が多い理由になっています。

女性の労働力を育てる環境が整っていないこともある

その一方で、女性の労働力を育てるという考えが日本の企業にはあまりないことも、女性の活躍を妨げてきた理由になっていると言われることがあります。男性を主体とした企業経営を重視している企業も珍しくなく、やりがいのある仕事を担当させてもらえないことも、定年前に女性が退職してしまう理由の一つとして考えられています。女性が働き続けるための環境が整っていない企業が多いことも、女性の活躍が思うように進んでいない理由の一つです。結婚や出産の後でも働くことを希望する女性は多いものの、子育てをしながら女性が働けるような環境が整っていない企業も多いために、結果として仕事を辞めてしまう女性が多くなっているのが現状です。
 

3.女性活躍推進法とは?

職場における女性の活躍を推進するという流れの中で施行されたのが、女性活躍推進法という法律です。転職やキャリアアップを希望する方の中には、この法律の内容や、企業に与える影響力について関心を持っている方も少なくないのではないでしょうか。そこでこの段落では、女性活躍推進法の概要や企業の義務などについて、詳しく紹介したいと思います。

3-1.女性活躍推進法の概要

  • 2016年の4月1日に施行されたのが女性活躍推進法
    • 女性職員の活躍状況の把握・数的分析
    • 女性の活躍推進のための行動計画策定
    • 計画を一般公開、の3つを義務化
       
  • 2019年5月29日に改正法が成立
    • 対象の事業:常時雇用労働者300人以上→101人以上に


女性活躍推進法が制定される直接のきっかけになったのは、2010年の12月に閣議決定された第3次男女共同参画基本計画です。この計画において当時の民主党政府は、2020年までに指導的地位の女性を30パーセントまで増加させるという具体的な目標を設定しました。こうした目標を受けて2016年の4月1日に施行されたのが女性活躍推進法です。2019年の5月29日には改正法が成立しましたが、10年間の時限立法として制定されている法律です。なお、女性活躍推進法の正式名称は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」です。

この法律の対象となっているのは、女性を雇用している国や自治体、民間企業などです。これらの職場における女性職員の活躍状況の把握や、数的な分析を法律では義務化しています。女性の活躍推進のための行動計画を策定することも自治体や企業の義務とされていて、策定した計画を一般に公表することも求められています。2016年に施行された当初は常時雇用している労働者の数が300人を超える事業者だけを対象にしていて、300人以下の企業はあくまで努力義務に過ぎませんでした。ですが、2019年の法改正により、常時雇用している労働者の数が101人を超える事業者にまで、行動計画の策定や公表が義務付けられるようになりました。

3-2.企業が取るべき行動・義務

  1. 女性活躍現状や課題について正確に分析する(女性の比率・勤続年数の男女差・残業時間・女性管理職の割合など)
     
  2. 一般事業主行動計画を策定する(内容・期間・数値目標)
     
  3. 行動計画を外部に公表する
     
  4. 定期的に現状分析をする
     
  5. 目標の再設定・取り組みの再策定を行う


女性活躍推進法に定められた規定に従い、企業がしなければいけない行動や義務は以下のようなものです。事業者はまず、自己の事業所における女性活躍の現状や課題について、正確に分析する必要があります。具体的には採用者における女性の比率や、平均勤続年数の男女差などを調査する必要があります。そのほかに、平均残業時間などの労働時間の状況や、管理職に占める女性の割合なども調査が必要です。これらの4つのポイントは事業者が必ず把握しておかなければいけない基礎的な事項です。

こうした現状分析を踏まえて事業者に求められているのが、一般事業主行動計画の策定です。この行動計画に記載すべき具体的な内容としては、計画の期間や取り組み内容などがあげられます。数値目標や取り組みの実施期間なども行動計画に記載すべき事項です。計画の策定と同時に、職場における女性の活躍状況が改善されているかどうか、定量的に測定することも重要視されています。

策定した行動計画を雇用している労働者に周知する義務も事業者にはあり、企業内部だけでなく、外部への公表も義務化されています。策定した行動計画は所轄の自治体に届け出る必要もあり、各都道府県の労働局が届け出先です。提出された行動計画は、厚生労働省が運営している「女性の活躍・両立支援総合サイト」内で利用できる「女性の活躍推進企業データベース」などで公表されています。女性活躍の推進を実現するためには、具体的な目標を設定して、計画を公表するだけでは不十分であり、策定後の定期的な現状分析も必要です。状況を正しく評価して、目標の再検討などもおこないながら、PDCAサイクルを確立する必要があります。

3-3.課題

女性活躍推進法という法律自体の認知度が低い

女性活躍推進法で定められた目標を達成するためには、解決しなければいけない課題もいくつか残されています。施行後における法律の運用状況を見てみると、一般事業主行動計画の届け出状況は非常に良く、全国的レベルで99パーセントに及ぶ事業者が、法令に従い行動計画の届け出をしています。その一方で今後の課題とされているのが、女性活躍推進法という法律自体、世間に広く知られていないという現状です。企業の経営者や人事の担当者にはよく知られていても、それ以外の人の認知度が低いので、せっかく行動計画を一般に公表しても、データとして十分に活用されていないという現状があります。

男性の育児参加などの整備も必要

女性活躍推進法に定められた規定だけでは、女性の活躍を推進するために必要な問題が、全て解決できないという課題もあります。こうした問題の代表的なものが、男性の育児休暇取得率が低いという日本の現状です。女性が働きやすい環境を実現するためには、パートナーである男性の協力も不可欠であることから、こうした課題の改善も別途に求められています。待機児童の問題なども職場における女性の活躍を妨げている一因となっていることから、何らかの新たな対応策が必要になっています。
 

4.女性活躍を推進する上で考えるべきポイント

女性の活躍を推進する上で考慮しなければいけないポイントの一つとしてあげられるのが、マネジメント層の意識変革です。職場における女性活躍の重要性を経営陣がさらに認識する必要があり、意見交流会や社員研修などを通して、女性の活躍に関する意識を深めることが重要になります。ソフト面とあわせハード面の整備もしっかりとおこなうことも、女性活躍を推進するうえでは重要なポイントになります。在宅勤務や時短勤務など、女性が仕事を続けやすい環境を整えてあげることで、女性が活躍しやすい職場環境を実現することができます。

妊娠や出産など、女性に特有なライフイベントに対応できるように環境を整備することも、企業が考慮すべき重要なポイントです。そのために必要になるのが女性社員の現状分析です。将来の多様なキャリアプランを考えられる環境を女性に提供することも、事業者には求められています。女性が出産を機会に退職することの経済損失は1.2兆円に達しているという意見もあり、働くスタイルをより柔軟に選べるように勤務状況を整備することも、全ての事業者が考えるべき大切なポイントです。
 

女性活躍の推進が企業発展のカギ

日本における女性活躍推進の現状や法律の内容、ポイントなどについて一通り紹介してきましたが、十分に理解していただけたでしょうか。少子高齢化が進行する21世紀の日本において、職場における女性の活躍が、今後の企業業績を左右する大きな要因として注目されています。一企業だけの問題ではなく、日本経済全体にとっても、女性の活躍が重要視されていることから、多くの企業が女性の活躍を推進できるように努力しています。

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