ユニバーサルデザインで働きやすい職場へ!7原則と導入例

12月3日は「国際障がい者デー」。従業員が働きやすい環境を整えることは優秀な人材の獲得や離職を防ぐことにつながると言われています。そのため働きやすい環境を整える方法の1つとしてユニバーサルデザインを取り入れる企業が増えているようです。では、職場にユニバーサルデザインを導入する際はどのようなデザインを意識すれば良いのでしょうか。そこで本記事では、ユニバーサルデザインとは何か、7原則や導入例などを紹介していきます。 

1.ユニバーサルデザインとは 

ユニバーサルには「普遍的な」「全体の」という意味があるので、ユニバーサルデザインを直訳すると「すべての人のためのデザイン」という意味になります。「すべての人」とは文字通り、社会に存在するあらゆる属性の人々を指します。社会には子ども・お年寄り、男性・女性、外国人、車椅子を利用する人、視覚障がい者など色々な人が暮らしていますが、年齢や性別、文化、身体の状況や個性にかかわらず暮らしやすくする必要があります。ユニバーサルデザインとは、個性や違いにかかわらず、様々な人が使いやすいように製品や建物、環境をあらかじめデザインする考え方で、この考え方は1980年代にアメリカのロナルド・メイス博士によって提唱され、日本には1990年代以降に持ち込まれました。 

2.ユニバーサルデザインとバリアフリーの違い 

ユニバーサルデザインと混同されやすい考え方として、バリアフリーが挙げられます。では、ユニバーサルデザインとバリアフリーにはどのような違いがあるのでしょうか。 

まず、バリアフリーは高齢者や障がい者などの生活弱者のために、社会生活を送る上で障がいとなるものを取り除くという考え方です。例えば高齢者が使いやすいように階段に後からスロープを付けたり、視覚や聴覚に障がいがある方のために点字ブロックや音声案内を設置したりするのがバリアフリーとなります。一方、ユニバーサルデザインは、デザインする段階で全ての人が使いやすいデザインにする考え方です。例えば、設計時点からスロープの設置を計画したり、階段や段差を作らず平らなデザインにしたりするのがユニバーサルデザインとなります。このように後から障がいを取り除くバリアフリー、デザインの段階から使いやすさを考慮するユニバーサルデザインという考え方の違いがあるのです。 

また、対象にも違いがあります。バリアフリーは主に高齢者や障がい者などを対象にしているのに対して、ユニバーサルデザインは国籍の違いや個人差にも配慮し、全ての人を対象としています。 

3.職場でユニバーサルデザインが必要な理由 

様々な人が使いやすい環境を作るというユニバーサルデザインの考え方ですが、これは職場においても必要な考え方です。 

職場でユニバーサルデザインが必要な理由として、少子化と人材不足が挙げられます。少子化に伴い人口が減少すると、15〜64歳の生産年齢人口も減少し、人材不足が起こります。平成28年の総務省の調査でも、総人口は2008年をピークに減少傾向にあり、生産年齢人口は1995年をピークに減少傾向にあります。このような状況の中、企業は少子化による人材不足を解消するために、国籍や性別、年齢、障がいの有無を問わず優秀な人材を採用する必要があるのです。また、グローバル社会で生き残るためには、柔軟な発想が求められ、人材の多様性も必要です。 

上記の理由により、多様な人材が働きやすい職場を作り、優秀な人材を獲得し、多様な人が能力を発揮できる職場を目指す企業が増えています。そして多様な人材が働きやすい職場を作る手段のひとつとして、ユニバーサルデザインが必要となる訳です。 

4.職場におけるユニバーサルデザインの7原則 

職場にユニバーサルデザインを導入する際に抑えておきたいのが、ユニバーサルデザインの7原則です。7原則はユニバーサルデザインの提唱者であるロナルド・メイス博士を中心に、建築家や工業デザイナー、エンジニアなどのグループが協力してまとめたものです。そこでここでは、7原則について導入例を含めながら紹介していきます。 

4-1.誰もが常に同じように利用できる「公平性」 

公平性とは、誰もが常に同じように設備や機器を使えることを指します。例えば、自動ドアや段差のないスロープが公平性の例に当てはまります。なぜなら自動ドアや段差のないスロープなら、歩いている人も車椅子に乗っている人も同じように利用できるからです。またエレベーター・エスカレーター・階段が併設された施設、ノンステップバスなども公平性の例に当てはまります。 

4-2.使い方を選択できる「自由度」 

自由度とは個人の特性(利き手、体格、身長差など)や好みに合わせて使い方を選択できることを指します。自由度の例として挙げられるのが、多機能トイレです。多機能トイレには複数の機能がついていて、車椅子の人も男性・女性も利用でき、赤ちゃんのおむつ替えもできます。また高さの異なる手すりやカウンターも体格や身長に合わせて選べるため、自由度の例に該当します。このように使う人の特性や状況に合わせて選べることが、ユニバーサルデザインに求められる自由度なのです。 

4-3.すぐに扱えるようになる「簡便性」 

簡便性(単純性)とは、説明書を読む、もしくは数回使用しただけで扱えるような直感的にわかるものを指します。簡便性の例として挙げられるのが、病院の案内看板などです。病院の案内看板は行きたい場所が大きな数字で書かれていたり色分けされていて、どちらに行けばいいかわかりやすいデザインになっています。また、手を入れるだけで簡単に水が出るセンサー式の蛇口なども簡便性の一例です。 

4-4.誰にでも理解できる「明確さ」 

明確さとは、誰でもその情報が理解しやすいことを指します。例えば電車内の案内表示は、複数の言語やひらがな、点字や音声案内などがあり、誰でも情報を明確に理解できる工夫が施されています。これにより外国人や子供、目や耳が不自由な方でも情報が理解しやすくなるのです。この他に音の出る信号機やピクトグラム(案内用図記号)なども、明確さの一例として挙げられます。 

4-5.使い方を間違えてもけがにつながらない「安全性」 

安全性とは、使い方を間違えても安全であることを指します。安全性の例として挙げられるのが、危険防止機能を搭載している家電です。例えば電子レンジは使用中に扉を開けると止まるようになっています。また、電気ポットはコードに足を引っ掛けた時に、ポットが倒れてお湯がこぼれないように、コードが簡単に外れるマグネット式になっています。これも安全性に配慮したデザインの一つです。 

家電以外だと線路への転落事故を防ぐ駅のホームドア、ベビーカーの車輪やハイヒールが隙間に挟まらないように配慮した網目の細かい側溝のふたなどが挙げられます。 

4-6.無理なく使える「持続性」 

持続性とは、長時間使用しても疲れず無理なく使えることを指します。例えば、水道のレバーは上下だけの少ない力で水を出せます。水道の蛇口には握って回すタイプもありますが、上下に動かすレバータイプの方が負担は少ないです。また、購入ボタンや取り出し口が腰の高さにある自動販売機も、車いすの方や背の低い方でも無理なく使えるため、持続性の例に該当します。 

4-7.十分な広さが確保されている「空間性」 

空間性とは、狭すぎず広すぎず、使う人がどんな姿勢や動きでも問題なく使えることを指します。例えば車いすの人と歩行者がすれ違う場合、通路幅は120cm、交差点や方向転換をするスペースは150cm円が必要と言われています。このように使いやすい広さや大きさを意識したデザインをするのが、ユニバーサルデザインにおける空間性です。導入例としては十分な広さがある多機能トイレ、車椅子での乗り降りを考慮した広い駐車スペースなどが挙げられます。 

職場にユニバーサルデザインを取り入れよう 

ユニバーサルデザインを取り入れることは優秀で多様な人材の確保にもつながります。一方で実際に職場で取り入れる際には、予算やスペースの問題で、希望通りに進まない場合もあります。ユニバーサルデザイン7原則を全て満たすことが理想ですが、7原則すべてを満たす必要はありません。誰もが働きやすい環境を作るために、できるところからユニバーサルデザインを取り入れてみましょう。 

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