求人を検索し、気になる求人に応募しましょう。
いくつかのクリックで適切な候補者が見つかります。
ペイジ・グループではポテンシャルを発揮できる機会を生み出すことで、人生を変えていきます。
ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
日本では男性社員が育児休暇を取得しにくい状況が続いていましたが、2021年6月に成立した育児・介護休業法の改正によって、そのような状況は変わりつつあります。以下では、同法に基づく新たな育休制度の内容や男性の育休取得時におけるポイントなどを紹介していきますので、男性の育休事情に関心があるという方は、ぜひ最後までご覧ください。
世界の中でも日本は特に女性の社会進出が遅れていると言われていますが、男性の育児取得率を見てもそのことがよく分かります。例えば、令和元年に厚生労働省が発表した資料を見てみると、前年の平成30年度の育休取得率は、女性が80パーセント以上に上っているのに対し、男性はわずか6パーセント程度に留まっているのです。10年前の平成20年度の男性の育休取得率が1パーセント程度であった状況からすると、少しずつ改善はしているものの、さすがに女性の10分の1以下しか育休を取得してきていないという状況では、育児の負担が女性に偏りすぎていると言わざるを得ないでしょう。
一方、このような状況であるにもかかわらず、子供が生まれたら育休を取得したいと考えている男性の数は増加傾向にあります。公益財団法人日本生産性本部が実施した平成29年度の新入社員に対するアンケート調査の結果によると、実に男性の新入社員の80パーセントほどが子供が生まれたときに育休を取得したいと回答しているのです。しかしながら、実際には、仕事が忙しくて休めなかったり、職場が育休を取得できるような雰囲気ではなかったりして、本人が希望しているにもかかわらず、思うように育休が取得できていないという状況が続いてきたのです。
男性の育児休暇の取得率向上は、長年にわたる日本社会の課題でしたが、企業の自助努力には限界があるということで、政府としても制度の見直しに向けて検討を続けてきました。その結果、2021年6月に育児・介護休業法の改正(改正育休法)が成立することになったのです。そこで次に、同法の概要について見ていきましょう。
改正育休法では、2022年4月から、企業に対して、周知・意向確認義務を課すことになっています。具体的には、企業は、育休を取得しやすい雇用環境を整備するとともに、妊娠や出産をした労働者に個別に育休制度を周知し、取得を希望するかどうかの意向を確認することが求められるようになるのです。ここでポイントになるのは、この義務は、大企業だけでなく、中小企業を含むすべての企業が対象になるという点です。また、努力義務ではなく明確に義務であるとされていますので、周知に努めたものの労働者に育休制度の内容が伝わらなかったという言い訳は通用しなくなります。具体的に何をすれば周知義務が果たされると言えるのかについては、ガイドラインなどを見てみる必要がありますが、少なくとも労働者に対する研修やセミナーなどは必要になってくると言えるでしょう。
なお、万が一、義務に違反してしまった場合には、行政労働局による指導勧告を受けるおそれがあります。また、指導や勧告を受けても状況が改善されない場合には、最終的には社名が公表されてしまいます。そうなると、労働者の育休取得に積極的ではないブラックな企業であるという社会的な評価を得てしまい、優れた人材を獲得しにくくなってしまいますので、企業の人事担当者はくれぐれも義務に違反しないように対策を講じる必要があります。
改正育休法では、2022年10月ごろに、新たに男性版の産休制度が創設されることになっています。具体的には、子供が生まれた場合、その父親は、出生から8週間以内に最大4週間の育休を2回に分けて取得できるというものです。この男性版産休制度によって、別枠の休職制度と合わせると、父親は最大で4回にわたって休職できるようになり、しかも回数と期間を様々に組み合わせられるので、かなり柔軟な対応が可能になります。もっとも、組み合わせ次第でいかようにも休めるようになるので、子供が生まれる前から、どのように制度を利用するかをしっかりと検討しておく必要があるという点には注意しなければなりません。
さらに、改正育休法では、大企業に対して、2023年4月から、労働者の育休取得率を公表することを義務付けています。ここで大企業というのは、常時1,000人以上の労働者を雇用している企業であると定義されています。売上高が小さかったり、赤字の企業でも、1,000人以上を雇用していればこの義務の対象になるというのがポイントです。このように、特定の企業に対して育休取得率の公表を義務付ける目的は、育休を取得しやすい環境や雰囲気を作り出すということです。
また、企業側にとっても、平均以上の育休取得率を公表できれば、若者が会社選びをする際に優先的に選んでもらえるようになるといったメリットがあります。また、持続可能な社会の実現に向けて、社会の構成員である企業にはESGやSDGsへの取り組みを求める動きが世界的に高まってきています。育休を取得しやすい環境作りも、まさにそのような取り組みの一環として扱われますので、企業としては、社会的な評価を獲得するために、ぜひ積極的に育休取得率の向上に取り組んで、その成果を積極的に社会に向けて発信していくようにすると良いでしょう。
男性社員の育休取得を推進することには、社員だけでなく、企業にとっても多くのメリットがあります。ここでは、それぞれのメリットを順に紹介していきます。
社員側のメリットとしてまず挙げられるのは、育休を取得している間は育児に専念できるという点です。妻と一緒に子育てをすることで、育児のノウハウを身に着けられるとともに、苦労も共有できるようになるでしょう。また、所定の要件を充足した場合には、雇用保険に基づく育児休業給付金を受給できるというメリットもあります。これは、育休開始時から6か月間は休業前の賃金の67パーセント、それ以降は最長2年まで50パーセントの給付金が得られるというものです。休職していても、一定の収入が保証されるため、安心して育休を取得できるようになるというわけです。
男性の育休取得には、企業側にも様々なメリットがあります。まず一つ目のメリットは、前述の通り、高い育休取得率を公表することによって、企業のイメージや評価を向上させられるという点です。また、育休の取得を積極的に推進すれば、社内の制度や職場の雰囲気をこれまで以上に良いものにできるでしょう。
次に、二つ目のメリットとして、男性社員が育休を取得した場合に助成金を得られるという点が挙げられます。厚生労働省では、男性の育休取得率の向上に向けた政策の一環として、男性の育休取得を目指す職場づくりに取り組んだ企業において、実際に5日以上(大企業の場合は14日以上)の育休取得者が出た場合に、当該企業に対して57万円(大企業の場合は28.5万円)の助成金を支給する制度を用意しています。これを利用することで、有給取得者の代替要員を確保する際の金銭的な負担を軽減できるというわけです。
さらに、育休中に仕事から離れてこれまでとは異なる経験を積んだ社員から、新たなイノベーションやアイデアが出てくるという点もメリットであると言えるでしょう。
男性社員が実際に育休を取得する際には、職場から不満が出ないように、あらかじめしっかりと準備をしておく必要があります。例えば、育休取得を決めたら、できる限り早めに上司にその意思を伝えて、時間的に余裕を持って引継ぎができる環境を整えるようにしなければなりません。また、自らの業務を整理して可視化するなど、誰でもその内容が分かるようにしておくということも大切になります。それ以外に、円滑に育休に入るには、上司や同僚との人間関係が重要になってきます。そのため、もし子供が生まれたら育休をとろうと思っているのであれば、普段から積極的に周囲をサポートしたり、コミュニケーションをとるなどして、良好な関係を構築しておくとよいでしょう。
男性社員の育休取得を推進するためには、会社としての取り組みも必要になってきます。例えば、システムを整備して、配偶者の出産予定が判明した際にスムーズに会社に申告してもらえるようにするというのは一案です。システムには、社員が育休制度を理解するために必要なコンテンツや、育休取得を確認できるような仕組みも併せて搭載しておくと良いでしょう。また、男性社員が安心して育休を取得できるようにするために、復帰後のサポート体制を整備するというのも重要になります。育休中であっても社内の制度変更や人事異動などをメールで伝えるなどして、できるだけ社員が職場から置いてけぼりにされていると感じないような環境を整えるようにするのがポイントです。
日本では、男性が育休をとるのを良しとしない職場の雰囲気などが理由で、男性の育休取得率が低いのが実情です。しかしながら、グローバルに柔軟な働き方が求められる中で、そのような状況がいつまでも許されるわけではありません。今回の改正育休法の成立は、職場の風土や個人の意識を変化させる格好のチャンスですので、ぜひこの機会を活かして労使で協力して男性の育休取得率の向上に向けて取り組むと良いでしょう。
インクルージョンとダイバーシティとの違いとは?
女性リーダー育成のために会社ができる5つの取り組み
障がい者雇用の現状は?助成金や企業の取り組みについて