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ビジネスの場においては、様々な課題や難題が存在しており、それと向き合いながら仕事をしています。例えば「男女差別」や「外国人差別」などがその代表例で、幾度となく問題視されてきました。そして、その中の一つに「年齢差別」というものもあります。この記事では年齢差別とは、一体どのような差別なのかを詳しく紹介します。関連記事:ダイバーシティマネジメントとは?メリットや事例をわかりやすく紹介
年齢差別とは、別名「エイジズム」とも呼ばれています。それは、年齢に基づいたさまざまな差別や偏見を指す言葉です。エイジズムという言葉の発祥は1969年までさかのぼり、アメリカの国立老化研究所初代所長のロバート・ニール・バトラー氏によって提唱されたものです。エイジズムとは年をとっているという理由だけで、高齢者を一括りにしてしまい、それが差別につながっていると定義しています。具体例を挙げると、高齢者が何かを行おうとした時に「その年齢では難しいのではないか」などといった年齢だけで否定的に判断してしまうことがエイジズムに該当するのです。このような年齢差別は、高齢化が著しい日本社会においても問題視されています。
このような年齢差別を撤廃しようと、各国は様々な方法を採っています。例えば、アメリカでは1967年に雇用における「年齢差別禁止法(ADEA)」が定められました。この法律では40歳以上に対する年齢差別が規制されています。特に年齢を理由にした解雇や、差別的な扱いを法的に禁止するなどが決められています。他にも「欧州連合」のEUでは、すべての加盟国において年齢差別を禁止する法律を制定しているのです。そして、日本でも2007年に「雇用対策法」が改正され、労働者の採用や募集にあたり、年齢の条件をつけられないという規制が行われるようになりました。このように世界各国では、エイジズム撲滅を目指すために、雇用における色々な年齢差別対策が行われているのです。
職場における年齢差別として、問題視されているものに「エイジハラスメント」があります。エイジハラスメントとは主に、年齢や世代が違うという理由で差別的な嫌がらせや言動を行うことを指します。セクシュアルハラスメントを「セクハラ」、パワーハラスメントを「パワハラ」と省略して言うように、エイジハラスメントを「エイハラ」と呼ぶこともあります。ただし、セクハラやパワハラに関しては、なじみのある言葉でありすでに広く普及しています。それに対して、エイジハラスメントは現在進行形で広まりつつある言葉といえるでしょう。
エイジハラスメントは性別や年齢を問わず誰もがエイハラの被害者、又は加害者になり得ることが特徴です。特に、加害者の場合にはエイジハラスメントを無意識のうちに行っていることもあるため注意が必要になります。これを防止するためには、エイジハラスメントの特徴を知ることが大切であり、自分の言動に細心の注意を払う必要があるのです。関連記事:アンコンシャスバイアスはリスクになる?9つの典型例を紹介!
ここでは、どのような言動がエイジハラスメントに該当するのかを具体例を挙げて紹介します。
誰かの名前を呼ぶときに、年齢を強調するような呼び方をした場合には、エイジハラスメントに該当すると考えられます。例えば、自分よりも目上の人に対する言い方として「おじさん」や「おばさん」という呼び方などは好ましくありません。それとは逆に、年下の部下を「ちゃん」付けで呼んだり、他にも「君はまだ若いから」などと言ったりすることも該当するケースがあるのです。この場合には、自分としては悪気なく言っているのかもしれません。しかし、相手やそれを聞いた周囲の人たちが、その言動を不快に感じた場合には、エイジハラスメントになり得るのです。
職場などでは上司や部下、同僚などとの雑談においてキャリアや業務などの話題が出たときに、自然に相手のプライベートや年齢の事について触れる場合があります。このような内容の話は、大概の人には問題ないことかもしれません。しかし、人によってはこのようなプライバシー関連の話題を様々な事情から避けたいという人もいるはずです。
例えば、結婚適齢期といわれるような年齢の人に対して、婚姻状況や恋人の有無等について聞くことは、エイジハラスメントに該当する場合があります。話を切り出した自身としては、普通の上司や部下とのコミュニケーションのつもりであっても、話を振られた相手にとってはエイジハラスメントであると捉えられてしまうこともあるため注意が必要なのです。
相手の年齢を極端に意識して、仕事の割り振りを変更することも、エイジハラスメントに該当する場合があります。例えば、職場に60代のシニア社員がおり、その人が希望する仕事があったとします。ところが、年齢だけを理由にそれより若い部下に行わせたり、仕事を割り振ることを却下したりすることはエイハラに該当します。それとは逆に、20代や30代の若手社員に、年齢が若いからという理由だけで、必要以上の多くの仕事を任せることも同様にエイハラと言えるでしょう。
確かに、シニアよりも若手社員のほうが体力もあるために、仕事を任せたくなることもあるでしょう。しかし、このように健康面や体力を考えた仕事の割り振りは大事ではあるものの、年齢だけで割り振りの判断することは、エイジハラスメントと捉えられるリスクがあるので注意が必要です。
もしも、職場の中でエイジハラスメントが頻繁に行われていた場合、従業員が苦痛を感じる原因に繋がってしまいます。それが一時的ではなく、継続的に行われ続けると、それに耐えきれずに退職などをする人が出始めて、人材流出につながるリスクがあるのです。このようにエイジハラスメントは、企業経営にとって重要な問題といえるのです。問題が起きているのに放置をし続けていると、職場の雰囲気が悪化するだけではなく、いずれは企業の業績にも影響が出始めるかもしれません。このような職場環境や業績の悪化、人材流出を防止するためにも、企業の経営者や総務、人事担当者などはエイハラ対策を真剣に考える必要があるのです。
エイジハラスメントを防止するためには、社内での意識喚起が重要になります。前述の通りエイジハラスメントは、セクハラやパワハラと違い、まだ社会的に広く言葉が認知されておらず、その概念を知らない人も多いです。そのため、エイハラの概要や注意点などを積極的に職場内で発信して、すべての従業員にエイハラとはどのようなものを指すのかを周知させることが重要です。
防止策としてまずは、アンケート調査を行ってみましょう。アンケートや個別の面談などを行い、エイハラに該当する事例がないかどうか確かめます。もしも、該当する場合があれば早急に事実確認を行って、真摯に対処やケアを行うことが大切です。アンケートや個別面談以外にも、相談窓口を設置することも有効な手段です。ただし、これらの手段は発生してからの対処法であり、発生する前にそれが起きないように防止することが最も大切であるといえます。そのためには、自分の言動に注意を払い、相手のことを考えながら話すことが大切なのではないでしょうか。関連記事:心理的安全性のある職場なら社員は幸せ?会社にも利益がある!
エイハラはセクハラやパワハラ同様に、いずれは社会に広く認知される言葉になるかもしれません。エイハラを放っておくと、職場環境や業績に悪化につながります。一人一人が言動に注意を払えば防止することができるのです。もし、発生してしまった場合でも迅速な対応で対処すれば、働きやすい職場を維持させることができるでしょう。
【2023年12月8日公開‐2024年9月2日更新】
本レポートでは、職場における「エイジズム」を含むDE&Iの現状をはじめ、給与、フレキシビリティ、AIにおける企業の期待と従業員が直面している現実の間に広がる「期待のギャップ」に着目。従業員の本音を正しく理解し、人材の獲得・定着にぜひお役立てください。
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