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近年、企業の間で注目が高まっているキーワードの1つが、「ダイバーシティマネジメント」です。その狙いは、多種多様な背景や価値観を持った人材を集めてビジネスの成果や企業としての成長を高めることにあります。内閣府や経済産業省などでも、ダイバーシティマネジメント推進への取り組みを強めています。
本記事では、ダイバーシティマネジメントに関心がある、自社で取り組みを始めようと考えている人向けに、重要性やメリット、実施する際に押さえておくべきポイントなどを解説します。ぜひ参考にして下さい。
ダイバーシティマネジメント(Diversity Management)はダイバーシティ経営とも呼ばれます。性別や年齢、人種、趣味嗜好など、人間はそれぞれ異なる背景・価値観をもった多様な存在です。こうした個々の従業員が個性を活かして活躍できる環境づくりを進めることで、新たな成果や成長、価値創造につなげる経営を指します。
ダイバーシティ(diversity)とは一言でいえば多様性を意味します。年齢や性別、人種、宗教、趣味嗜好、性的指向など、さまざまに異なる人々が集まり、共存している状態のことです。一方、マネジメント(management)とは一言でいえば経営、管理を意味し、組織として目的を達成できる管理する機能そのものを指します。
このような意味をもつダイバーシティマネジメントは、「ダイバーシティ経営」などとも言い換えられます。
現在、経済産業省では、少子高齢化での人材確保や、多様化する市場ニーズ・リスクへの対応力の向上を目指し、ダイバーシティ経営を推進しています。
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ダイバーシティマネジメントが重視されるようになった理由としては、まず、少子高齢化による労働人口の不足により、多様な人材の活用を通じて人手不足解消につなげる点が挙げられます。
また、ワークライフバランス重視など働き方の価値観に変化が起こり、企業として対応を迫られている状況があります。海外展開を目指して日本企業のグローバル化が進んでおり、必要な人材確保のためにダイバーシティマネジメントが有効であることも、理由の1つです。
ダイバーシティマネジメントが重要視される第一の理由は、少子高齢化による労働人口不足の解消にあります。
日本の人口は2011年を境に減少し始めたとされており、生産年齢人口である15〜64歳人口の全人口における割合は2020年には59.1%、2065年には51.4%に減少すると予測されます。企業にとって、働き盛りの男性のみでは労働力の供給が困難になっていることを意味します。
ダイバーシティマネジメントの推進を通じて、男性のみならず女性や定年後のシニア層、外国人など、より幅広い層から多様な人材を登用することで、不足する労働力を補い、業務の生産性を上げることが可能です。
今は、定年まで一つの会社に勤め上げる終身雇用制や長時間の残業などは、もはや当たり前ではない時代です。
仕事と同時にプライベートを重視してワークライフバランスを追求する人々が増えました。政府が推し進める働き方改革の後押しもあり、テレワークやフレックスタイム制、時差出勤制度などの導入が進んでいます。
さらに、2020年から始まった新型コロナウイルス感染拡大により、多くの企業がテレワークの導入に踏み切ったことで、この動きにさらに拍車がかかりました。
こうした社会の変化・働き方の価値観の変化に対し、企業も対応を余儀なくされています。従来の形にこだわらず、自社の雇用のあり方を変えていく取り組みが重要です。
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日本は少子高齢化に伴い人口が減り、市場の縮小が懸念されています。これまで国内市場のみを相手にしてきた企業の間では、生き残りをかけてグローバル展開を進める動きが顕著にみられます。
社会やビジネスのグローバル化が進むと、日本以外の国々・地域への理解を深める必要性も出てきます。異なる国々や地域での価値観やニーズの違いを読み取り、早い段階で必要な手を打ってビジネスチャンスをものにするには、英語やその他の言語に堪能な人や外国人、チャレンジ精神にあふれた人など多様な人材を増やすことが大前提です。
人材の育成と同時に、マーケティング力の強化や利益創出に向けたシステムづくりなどの取り組みが大切です。
ダイバーシティマネジメントを実施することで得られるメリットとして、まず、従来の採用方針から方向転換優して多様な背景を持った人材を募ることで、優秀な人材を確保しやすくなる点が挙げられます。異なる価値観を持った従業員同士のコミュニケーションを通じて新たなアイデアが生まれ、イノベーション向上につながる点や、ダイバーシティ推進に積極的に取り組むことで企業としての社会的評価が高まる点も見逃せないメリットです。
ダイバーシティマネジメントの推進を通じて、テレワークやフレックス制、勤務間インターバルなど多様な勤務制度が導入されます。結果、主婦やシニア層など、従来の働き方では勤務できなかった多様な人材を獲得しやすくなるのがメリットです。
多様な人材の中から、専門スキルや資格を保有する人、特定領域で貴重かつ豊富な経験を培った人など、隠れた優秀な人材を発掘できる可能性があります。多様性を重視する社風は若年層にも魅力的に映るので、若手人材を登用できる可能性も広がるでしょう。
ダイバーシティマネジメントを通じて多様な背景や価値観を持った人材が活躍する環境が整えば、新たな発想や画期的なアイデアが生まれる可能性があります。
終身雇用制で男性中心の従来的な会社では、価値観が画一化しがちで、新しい製品やサービスを生み出すためのアイデアも生まれにくい状況です。その点、多様な価値観・背景を持つ従業員同士がそれぞれ異なる視点からアイデアを出し合えば、そこから画期的な発想が生まれる可能性が高まり、イノベーション向上につながります。
アメリカで始まったダイバーシティマネジメントは、今やグローバルかつ時代のニーズに沿った取り組みとして重要視される経営戦略です。ダイバーシティマネジメントへの注力は、企業としての社会的評価の向上につながります。
取り組みの例として、女性だけでなくシニア層、外国人やLGBTQの人材を積極的に取り組んで離職率低下に成功した企業や、短時間勤務をやジョブリターン制度、育児休業・休暇制度の積極的導入で働き方改革を推進した企業などが挙げられます。
性別や年齢、人種などの違いに関わりなく正当な評価が受けられ、多様な働き方ができる企業であれば、従業員も意欲的に働けるので満足度がアップし、外部からも良い印象がもたれ、企業としてのイメージ向上が期待できます。
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ダイバーシティマネジメントは注目度が高い一方で、日本ではなかなか浸透しづらい取り組みです。
理由の1つに、元々英語が得意ではない人が多く、グローバル展開に踏み切れず国内市場にとどまっている傾向があり、外国人の受け入れに対して消極的な姿勢が強い点が挙げられます。
また、従来的な終身雇用が根強く、管理職も男性が多いなど、男性中心の組織から脱却できない企業が未だに多いのも、理由の一つです。
男女間でもそれぞれの特徴や役割などに対し「男性の方が長く活躍してくれる」「女性はサポート役」など無意識の偏見が存在し、企業の中で意識改革が進んでいない点も、ダイバーシティマネジメントの浸透を阻んでいる壁の1つといえます。
関連記事:無意識の偏見「アンコンシャスバイアス」のリスクとは?
ダイバーシティマネジメントを実施する際、具体的な計画なしで進めてもうまくいかない可能性があります。
押さえておくべきポイントの1つは、ダイバーシティマネジメントを実施する目的や目標を明確化し、その達成に向けて適切な施策を立案・実施することです。就業規則の見直しや公正な評価基準の設定など、従業員が活躍できる環境づくりも大切なポイントです。説明会や研修、密なコミュニケーションを通じて、組織全体に浸透させる取り組みも必要です。
ダイバーシティマネジメントへの取り組みは、実施する目的や目標によってとるべき施策が変わります。
例えば、人材確保を目的に女性が活躍できる会社を目指すのであれば、育児休暇や介護休暇を整備して仕事に復帰しやすい仕組みをつくる、女性リーダー育成に向けたキャリア支援制度を整備するなどの施策が考えられます。
働き方への満足度向上を通じてイノベーション創出を図るのが目的であれば、多様な背景を持つ人材の確保とともに、在宅勤務や勤務時間の調整など、自由な働き方でストレス軽減と満足度向上を図る施策が功を奏します。
施策の効果を最大限に引き上げるためにも、ダイバーシティマネジメントを実施する目的や目標をしっかりと明確化することが大切です。
従業員が活躍できる環境を整えるには、妊娠や子育て、介護など従業員のニーズを満たす働き方を実現えきるような雇用形態・就業規則などを見直すとともに、努力や成果が正当に報われるよう評価基準を明確化するなどの取り組みが必要です。
また、従業員同士が多様な背景を持った価値観が異なる人たちと理解し合えるよう、例えば社内イベントを実施したり、パーティションを取り払ったり、フリースペースを設置するなど、社内コミュニケーションが潤滑化される環境づくりも必要です。
ダイバーシティマネジメントの目的が明確化されて方向性が決まったら、従業員への説明会や研修などを通じて取り組みを浸透させ、共感を得ることも大切です。
ダイバーシティマネジメントの取り組みを定着させるためには、従業員に丸投げするのではなく、経営層・マネジメント層と従業員との間の密接なコミュニケーション、また従業員同士での活発なコミュニケーションが大切です。自由に意見交換をし合い、相互理解を通じてそれぞれの違いを尊重することで、ダイバーシティの価値観を浸透させることができます。
関連記事:社員のスキル向上のため企業ができる取り組みとは?方法や注意点
ダイバーシティマネジメントを実施する上で参考になるのが、他社での取り組み事例です。
具体例として、外国籍エンジニアの積極的な採用でグローバル展開を推し進めている企業、独自のフリーフレックス制度導入で主婦やシニア層を採用して人材不足を解消した企業、そして女性管理職の割合20%を掲げて実際に目標を達成した企業の取り組みをご紹介します。
情報通信業を営むA社では、日本で人気を博していた自社のITサービスを海外展開し、さまざまな国々・地域のお客様の多様なニーズに対応しつつ、グローバル・スタンダードへと向上させていく課題を抱えていました。そのためには、年齢や国籍、宗教など多様な背景を持った人材による新たな組織づくりが重要と考えました。
そこでA社では、新入社するエンジニアの8割以上は日本以外の外国籍から登用するとともに、社内ミーティングの資料やコミュニケーションツールを日本語・英語併記にするなど環境を整備しました。
一方で、エンジニアはどうしても男性に偏りがちなので、女性従業員が活躍できる環境を整えるとともに、無意識のジェンダーバイアスを取り払うためのワークショップの実施なども含めた枠組みづくりにも取り組んでいます。
加工業務の受託業を営むB社が本社・工場を移転をした地域では過疎化が深刻化しており、主婦や高齢者向けの仕事が不足している一方、製造業などは人手不足により廃業・撤退に追い込まれていました。
そこでB社は、主婦層や高齢者層向けに、1日1時間から、遅刻・早退・欠勤全てOKという独自の完全フリーフレックス制を導入しました。
当初採用されたのは5人程度だったものの、その後口コミで評判が広がり、最終的には生産に必要な人材を確保することに成功しました。従業員は育児や介護の急な都合でも気兼ねなく早退できるなど、働きやすい環境が実現しました。
作業の手順や1時間あたりの作業数量の目安、ノルマを分かりやすく明記したマニュアルを作成したことで、作業品質の維持にも成功しています。
情報通信業を営むC社では、ダイバーシティ推進に向けた取り組みの1つとして、2025年までに女性管理職の人数を2020年の2倍、比率では管理職全体の20%にすることを目標に掲げました。
目標の達成に向けて、女性管理職育成のためのキャリア形成・マインド醸成プログラムや、管理職向けに多様な人材のマネジメントを学ぶプログラムの実施、組織およびグループ各社で策定された管理職登用計画に基づくモニタリングと報告などの取り組みが行われました。
同時に、介護支援制度や子育て支援制度を通じてライフイベント・ライフスタイルに合わせた働き方が可能な環境づくりにも力を入れました。
こうした努力が実り、C社では2022年に目標であった女性管理職の比率20%を達成しました。
ダイバーシティマネジメントへの取り組みは、優秀な人材の確保、イノベーション創出の促進、企業の社会的評価向上などを通じて、企業としての成長を促進する上で不可欠です。実施する際は、目的や目標を明確化して施策を立てる、社内全体に浸透させる、従業員が活躍しやすい環境づくりを行うなどのポイントを押さえながら取り組むことも重要です。
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