人材獲得競争が激しさを増す中、企業は他社との差別化を図るために、キャンディデイトエクスペリエンス(採用プロセスにおける候補者体験)に注目しています。応募から面接までの選考プロセスでどのような第一印象をもったかどうかが、その候補者が内定を受諾するかどうかの決断に大きく影響するのはもちろんですし、もし選考プロセスで悪い印象を持たれてしまった場合は、その口コミが今後の採用に響く可能性もあります。

9割が選考プロセスに不満を感じたことがあると回答

インターネットによって、企業に関するポジティブな情報もネガティブな情報も、より簡単に入手できるようになった今、採用プロセスのあらゆる側面がこれまで以上に重要になってきています。しかし、魅力的なキャンディデイトエクスペリエンス(候補者体験)を構築することは、想像するよりもずっと難しいことです。候補者体験を魅力的なものにするには、その過程のすべてのステップで一貫したメッセージを発信し、最終的には働く価値のある企業であることを示す必要があります。

選考プロセスのごく最初の段階で体験することであっても、それがそのポジションに応募するか否か、その後に採用が決まった時に、オファーを承諾するかの判断にも影響してくるため重要です。しかし、この採用プロセスにおけるキャンディデイトエクスペリエンスが、どれほど大きな影響をもたらすかは依然として十分に理解されているとは言えません。マイケル・ペイジの採用・転職ガイド「人材トレンド2021」によれば、回答者10名のうち実に9名が、企業との面接で不満を感じた経験があると回答しており、その半数以上が、その不満が最終的にはオファーを受けるか否かの判断に影響を及ぼしたと回答しています。では、採用プロセスを改善するために企業には何ができるのでしょうか? 


キャンディデイトエクスペリエンスを改善するためのステップ

選考プロセスを改善する

選考プロセスが滞りなく進むようにすることは容易ではありません。候補者から不満として最も多く挙がったのは、「企業側からのフォローアップ不足」「仕事で期待されることや報酬に関する透明性の欠如」「不必要に長く退屈なインタビュープロセス」の3つでしたが、これらの不満は、正しい知識とツールによって容易に軽減できる可能性があります。

キャンディデイトエクスペリエンスを改善するためには、企業は応募前から入社までの採用プロセスを見直す必要があります。まず、転職希望者の仕事探しのプロセスをできる限りスムーズにすることが大切です。そのためにはまず、企業のホームページ上の「採用情報」や「仕事内容」を分かりやすく、ポイントを押さえたものである必要があります。また、オンラインでの応募が簡単にできるようにしておくことも重要です。採用情報ページを魅力的で可能な限り見つけやすいものとするほか、応募方法を候補者にとって分かりやすくしておくべきでしょう。

候補者は、何も知らされていないと感じることを望んでいないため、コミュニケーション不足によって候補者が不満を感じるかもしれません。候補者の時間を尊重し、適度な数のインタビューを行い、迅速にフォローアップすることで、候補者の採用プロセスにおける体験は総じて良いものとなるでしょう。

Googleが自社の採用プロセスを調査した結果によれば、十分な情報に基づいて採用を決定するためには、インタビューは4回でも十分過ぎることが示されています。企業がすべきことはあくまで、インタビューの中で候補者に的を得た質問をすることです。また、インタビューを通過した候補者には、誰が次のインタビューを行うのか、どんなテストが課されるかなど、残りのステップについて最新の情報を伝える必要があります。

オンボーディングを改善する

また、オンボーディング(入社直後研修)は、採用におけるその他の段階と同じく、キャンディデイトエクスペリエンスにおいて重要となります。応募前の段階からインタビュー、最終的に候補者が正式にチームに加わるまでのプロセスで一貫した対応をすることは、その企業がいかに人材を大切にしているかを示すことにつながります。

コロナ禍の採用活動のオンライン化による影響

世界のほとんどの地域で採用活動がオンライン化された今、キャンディデイトエクスペリエンスはかつてないほど重要になっています。実際、新型コロナウイルスのパンデミックの中、86%の企業が、非対面型のインタビューへの切り替えを余儀なくされました。そのため企業は、対面型のインタビューを行う場合と同じように、いかにして候補者とつながり、情報を提供していくのかを再考する必要に迫られています。

なお、候補者に新型コロナウイルスのビジネスに対する影響や今後の見通しについて伝えることは、候補者との信頼関係を築き、将来の見通しに対する不透明感を払拭することにつながります。オンラインツールを活用して、デジタル環境下でのインタビューに参加しやすくするほか、定期的に候補者とコミュニケーションを図り、フィードバックを行うことで、コミュニケーションのギャップを解消できます。


なぜキャンディデイトエクスペリエンスは重要か?

エンプロイヤーブランディング

キャンディデイトエクスペリエンスが重要なのは、候補者の65%が、面接でネガティブな体験をすれば、その企業で働くことに対する興味を失うと回答しているからだけではありません。これはエンプロイヤーブランディングの主な構成要素でもあり、企業が社員をどのように扱っているかは、将来のエンプロイヤーブランドに大きく影響する可能性があります。

面接では、見ず知らずの面接官に個人的な経験を話すことになるため、そもそもリラックスできるものではありません。その意味で、候補者は相対的に弱い立場にあり、インタビューの合間にいくらか時間をとってより快適に話せるような流れを作ることで、候補者は自らの経験を他人に話したいと思うようになるかもしれません。また、不採用となった候補者がネガティブな体験をした場合、それを他の人に話す可能性が高く、将来的に人材を惹きつけることに影響するネガティブな評判が生じることになります。

また、企業評価サイトであるGlassdoorの調査では、ユーザーが企業を判断する前に少なくとも6つのレビューをチェックすることが分かっています。また最近では、求職者の70%が、自らのキャリアにおける決断を下す前に企業に対するレビューをチェックしています。
 
キャンディデイトエクスペリエンスに焦点を当てた調査を行う非営利団体であるTalent Boardの調査では、採用プロセスにおいてネガティブな体験をした候補者の35%がソーシャルメディアで共有し、GlassdoorやIndeed にレビューを投稿することが分かりました。つまり、採用プロセスにおいて候補者が体験したことは瞬く間に広がってしまうのです。

キャンディデイトエクスペリエンスが企業の収入に影響を及ぼす可能性も

企業の収入という観点からも、キャンディデイトエクスペリエンスはとても重要です。選考プロセスの不備から企業に対する信用を失い、年間数百万ドルの収入を失った事例もあるためです。

例えば、英通信大手のVirgin Mediaは、毎年15万人の応募がありますが、そのうち採用されるのは3,500人に過ぎません。2015年には、選考プロセスの不備で同社の利用者でもあった応募者のうち7,500人が不満を感じ、同社との契約を解除、その代わりに競合他者と契約したため、年間600万米ドルの収入が失われました。その後Virgin Mediaは、採用プロセスを体験した候補者が新たな顧客となるようなポジティブなキャンディデイトエクスペリエンスを実現することに注力するため、採用プロセスを刷新しています。 


候補者の視点に立つことが求められている

企業が候補者の適性を評価するように、求職者も企業が自分にフィットするかどうかを常に評価しています。採用プロセスにおいて候補者がどのような体験をするかがいかに重要かを理解し、尊敬や信頼、そして候補者をサポートするような体制を構築できるような採用プロセスにしていくことで、企業は急成長する雇用市場において競争力を高めることができます。

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