2020年適用の「同一労働同一賃金制度」とは

政府は2020年4月1日より、働き方改革の一環として「同一労働同一賃金制度」を施行します。この制度はすべての雇用主に対して適用されるもので、内容は同じ職務を行う従業員には同じ額の賃金を支払うというものです。骨子は、同じ仕事をする限り、正社員も非正社員も区別なく同一の賃金が支給されるべきという点にあります。つまり派遣社員や契約社員の給与や福利厚生が調整され、すべての業界・職種において非正社員の大きな待遇改革が実施される見通しとなっています。

日本では現在、非正社員の立場で労働する人が増加しています。これまで日本では正社員と非正社員の間には大きな待遇差があるのが当たり前でしたが、同じ職務を遂行している限り不条理な格差があるのはおかしいと指摘され続けてきました。

今回の制度はこの格差を解消し、働き方に多様性を持たせる社会を創造することが目的です。正式にいえば、正規雇用労働者に該当する無期雇用フルタイム労働者と非正規雇用労働者に該当する有期雇用労働者やパートタイム労働者、派遣労働者の待遇差を解消する制度といえるでしょう。
 

海外における同一労働同一賃金の考え方

同一労働同一賃金の考え方は、海外では当然のこととして浸透しています。ただ、今回日本が目指している形とはコンセプトが異なるのもまた事実でしょう。たとえばEU諸国では、人権保護のためにこうした考え方が位置付けられています。性別や障害など、個人の意思ではどうにもならない事情や宗教などの信条を理由に、差別を起こさせないための考え方となっています。特に人権問題に力を入れるフランスでは、産業別労働協約というものも存在します。これは企業をまたいで「職務」という横ぐしで賃金を決める制度で、その結果同じ職務に就く人は同一賃金になりますが、日本とはまったく異なる考え方といえるでしょう。

日本がこれから目指すのも企業ごとの労働条件の統一化であって、異なる企業間においての統一化ではありません。同じ企業内で雇用形態の違いによる待遇の格差を解消するのが目的ですので、コンセプトが異なることを理解する必要があります。同一労働同一賃金制度が施行されたからといって、海外とまったく同じ雇用環境になったとは考えないことです。
 

施行に関するメリット・デメリット

同一労働同一賃金の施行がもたらすメリットデメリットは、労働者サイド雇用者サイドそれぞれにあります。どちらかといえば労働者サイドに有利な面が強調されますが、長い目で見ればそれが雇用側のメリットになることも少なくありません。

たとえば非正社員が今の職務に就きながら、教育制度など必要な技能を身に付ける福利厚生制度を利用できるようになることで、スキルアップを図り、結果的に業績アップにもつながります。キャリアアップできる環境が見えることで、非正社員のモチベーションもアップし、ポテンシャルを引き出す結果にもなるでしょう。雇用形態に縛られることなく従業員がより高みを目指せる環境が生まれれば、少子高齢化で問題化している労働者の減少も改善される期待があります。現在多くの企業が人材不足で実に苦しい状況が続いていますが、正社員雇用をしなくても期待できる人材を確保し、自社内で育てる環境を持てることは雇用側にとっても大きなメリットです。

一方デメリットといえば、当然ながら雇用する側の人件費の高騰が大きな懸念材料でしょう。同一労働同一賃金だからといって、正社員側の基本給を下げてならすことは困難です。基本的には非正社員の賃金アップを前提として対応が必要ですが、当然福利厚生も教育制度もすべて同じ処遇になるため費用負担が劇的に増加します。もともと正社員が非正社員よりずっと多い企業ならさほど問題ではない場合もありますが、従業員のほとんどが非正社員というような企業では深刻な事態に陥りかねません。

そのため非正社員を一律で考えるのではなく、非正社員にもランクを設け、就く職務により細かく賃金設定を行う必要があるでしょう。つまり、非正社員側も配属される部署や就く職務によって待遇に差が出ることになり、どのような働き方をすべきかきちんとキャリアを考える時代に突入したといえます。ただ、こうした制度の施行は、すべての労働者にとって公平な環境を構築するための第一歩であることは間違いありません。労働者サイドも雇用者サイドも考えるべきことはたくさんありますし、構築は簡単なことではありませんが、日本の将来に向けて正しい方向へ動き出していることは事実です。


派遣・契約社員として人材の需要が高いのは

こうした社会の大きな変革に際し、これから派遣社員や契約社員として働く場合に、どのような考えを持って仕事に就くべきかは熟考すべきポイントです。

現在人材としての需要が高いのは、ファイナンスや人事、ロジスティック・サプライチェーンなどの職種です。また、IT業界においてはデジタルを専門とした人材の需要が非常に高く、特にAI分野では実績あるエンジニアをほしがる企業が急増しています。
たとえばDevOpsの経験を持つデベロッパーやRPA、機械学習に精通したエンジニアなどは引く手数多で、アプリケーションプロジェクトマネージャーなどを務められる人材は待遇も期待されます。とにかく人材の絶対数が少ないため、2020年4月以降は派遣・契約社員の給与面においての増加も見込まれるでしょう。しかもIT分野は専門職のため、たとえ日本語のレベルが低くても業務に支障が出にくく、外国人の契約社員採用が急速に進んでいるジャンルでもあります。これまで日本の雇用制度の不条理に不満を抱いていた海外の技術者も、2020年4月以降は納得して就業できる環境が整う可能性も高いでしょう。

同一労働同一賃金制度が雇用者サイドにとっても長い目で見て有効に働くという意味は、こういう点でもいえることです。また、一般事務職は変わらず需要が高く、適切な書類管理やデータ管理、スケジュール管理の行える人材はどの企業でも必要とされています。ただ、事務系でも採用コーディネーターや翻訳・通訳など、特殊なスキルを持つ人材の需要が高まっている点は特筆できるでしょう。また、金融オペレーションや経理など、金銭管理に精通した人材も求められています。一昔前はこうした職種に非正社員が就くことはほとんどありませんでしたが、新しい考え方を持つ企業はそうした区分けはなく、さまざまな待遇で労働者を雇用する形に変化しつつあります。


雇用者サイドに求められることとは

従業員を雇用する経営者としてすべきことは、まず自社内の職務内容を明確に区分けすることでしょう。同一労働同一賃金制度に対応するためには、すべての従業員を雇用形態ではなく職務内容で分ける考えに切り替えることが必要です。賃金は職務に対して支給する、職務が異なるならその違いに応じて賃金設定を行うというのが、シンプルでわかりやすい考え方でしょう。もし今まで待遇の違いが不明確であったなら、すべて可視化して従業員も含めて全社で共有し、把握できるようにするのがこれからの企業に必要な形です。また、経営を健全に継続するためには人件費の詳細を算出し、予算の確保が必須です。生産性、効率性を考慮し、必要な人材は早めに確保して業績アップに貢献できる組織づくりに取り組むことが重要です。まだ時間があると考えているなら、もはや猶予はないことを実感しなければならないでしょう。
 

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