仕事でストレスを抱えているビジネスパーソンはかなり多く、その数は半数以上にもなります。ストレスの原因はさまざまありますが、それに対してどう対処するのかも人それぞれですし、うまくいかないこともあるかもしれません。困難に対して適応できる能力、レジリエンスを身につけることは、ストレスを受け流して能力を向上することにつながります。
 

1.レジリエンスとは

もともとレジリエンスという言葉は物理学の用語が発祥ですが、今では、心理学、経営学、幸福学、組織論などの分野でも使われるようになってきました。ボールやバネに外的な圧力、ストレスを加えて変形させた時に元に戻ろうとする力がレジリエンスです。脆弱性と反対の概念で、弾力、回復力、復元力、跳ね返りなどと和訳されます。心理学の世界では、困難な状況に対してうまく適応できる能力やその過程、適応した結果を指す言葉です。外的な圧力を跳ね返す復活力と外的環境に順応していく適応力がその本質で、困難に直面しても乗り越えて素早く立ち直る「打たれ強さ」のことや、それを身につける過程をレジリエンスと言います。バブル崩壊以降の企業のあり方はそれ以前に比べて大きく変貌しました。終身雇用制による人事評価から成果主義へ移行し、ビジネスパーソンは多くのストレスを抱えることとなりましたが、そのストレスを跳ね返して回復するための力がレジリエンスです。
 

2.レジリエンスが注目されるようになった背景

レジリエンスが注目されるようになったのは1970年代からで、第2次世界大戦下にナチスドイツのホロコーストによって孤児になった子どもたちを追跡調査する過程で認識され始めました。過去のトラウマを払拭できずに生きる意味や気力を無くした子供たちがいる一方、試練を乗り越えて前向きに生きている子供たちもいることが判明したことから、その理由を研究しました。その結果、強く生きている子どもたちには思考の柔軟性があることが分かり、その思考によって復活して今の状況に適応している状態やその力を、レジリエンスと呼ぶようになりました。2013年のダボス会議のメインテーマでもレジリエンス・ダイナミズムが取り上げられ、国際競争力が高い国ほどレジリエンスも高いと評価されました。グローバル化の現代では経済危機、金融危機が起きればまたたく間に世界中に広がっていきます。その状況の中でも経済を回復させられる国こそレジリエンスが高い国だと言えます。

心理学の世界で注目されるようになった理由は、働く人の多くが仕事環境でストレスを抱えていて、それを乗り超える力が不可欠だと考えられ始めたためです。厚生労働省が行った「平成30年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、仕事でストレスを抱えていると回答した人は全体の58%に上っています。労働環境を企業側が改善することも大切ですが、今後は一層厳しくなることも予想されますので、従業員が環境に適応できるレジリエンスを自ら身につける必要があるわけです。
 

3.レジリエンスが必要とされる人材

レジリエンスは仕事でストレスを溜めやすい人には特に必要とされる能力です。具体的には中間管理職やリストラの対象となりやすい40歳以上の従業員、幹部候補やリーダー的な立場で働いている人、変化の激しい業界で働く人などです。頑張り屋の人や若い人も、仕事上の失敗でくじけて退職することがないようにレジリエンスは必要です。せっかく採用した新人がたった一度の失敗で離職してしまったら企業にとっても大きな痛手です。今どきの若い人は挑戦することが苦手で失敗を恐れるタイプだと言われることもありますが、そんな若い人たちこそレジリエンスを高めてポジティブに考えられるようにし、成長するための土台とする必要があります。

国際競争力の低い日本型企業で働くビジネスマンにとっても大切な能力だと言われています。日本人の海外留学は2004年をピークに減少していますが、これは若い世代の内向き志向、グローバル化への逆行が原因だとも言われることがあります。自己肯定感の低さ、自尊感情の欠如から自分に自信が持てずに外に出ていきにくいとも考えられます。国際競争の中で日本人が存在感を高めるためにはレジリエンスの強化が必要な時期に来ています。
 

4.レジリエンスが強い人の特徴

レジリエンスが高い人には共通の特徴があるようです。成功した時には喜んで失敗した時には激しく落ち込むなど、感情の起伏が激しいと精神が疲れてきますが、レジリエンスが高い人は喜怒哀楽をコントロールできます。感情をコントロールすることで物事に一喜一憂せず、仮に失敗したとしても次はどうすればいいのか冷静に判断できます。失敗に対して悲観することも無く、次は大丈夫だとポジティブに考えられます。物事を楽観的に考えることで失敗して落ち込んだとしても立ち直りが早く、その失敗を糧として成長することができます。

レジリエンスを持った人は過去の成功体験から自分に自信を持っていて、自分のことを信用しています。ピンチの時に助けてもらった経験から周りの人も信頼し、同じ価値観を持った仲間の手助けを頼りにすることも特徴です。助けてもらった時の恩はきちんと返す気配りを持ちあわせることで、対人関係はどんどん良好になっていきます。広い視野で様々な分野に興味を示すことで変化に対応する能力も備えていますし、失敗した原因を考えて目標設定が高すぎたようなら、すぐに切り替える柔軟さも持ちあわせています。
 

5.レジリエンスを高めることで得られる効果

目標が高ければ高いほど多くの困難が待っているでしょうが、レジリエンスを高めることで乗り越えることも可能です。自分を客観的に見ることで、過大評価、過小評価することが無くなり、今の状態を冷静に見きわめることができるようになります。その結果、自分に足りない部分を的確に判断できるようになり、さらなる能力アップへとつながります。ストレスを溜めにくくなることで、改善方法を自分で見つけられます。人間関係を良くしようと前向きに考えるようになり、周囲に対しての働きかけも効果的です。集中力やパフォーマンスが向上することでこれまで以上の結果を出すことができますので、営業成績のアップも期待できます。
 

6.レジリエンスを高める方法

下記では、レジリエンスを高める方法について解説していきます。

6-1.物事のとらえ方を変える

ある事柄に対して自分の考え方を変える事から始めます。思考は子供の頃の影響が大きく、親から否定されて育った人はネガティブ思考になりやすいと言われますが、今の自分の思考を冷静に分析してみましょう。ある出来事がマイナスな結果となった時には過去の経験によってネガティブに考える場合もありますが、冷静に受け止め、分析することで自分の思考癖を把握し、過去の自分をそのまま受け入れます。今起きている状況は考え方によって良くも悪くもなりますので、自分を否定するのではなく、時には開き直ることも必要です。最良の結果を1つだけに決めつけずに多方面から見る視点を養うことも重要です。物事の捉え方を変えることができれば感情や思考をコントロールすることもできるようになります。

6-2.自尊感情を高める

自尊感情とは自分を過小評価しないで価値のある人間だと考えることです。価値があるかどうかを他人と比べるのではなく、自分のすべてを受け入れることが大切です。自尊感情が低いと自分の弱点ばかりが気になり、自信のない態度となって現れます。困難にぶつかった時も最初から諦めるのではなく、自分の強みを生かして新しい視点で物事を判断しましょう。自分の弱い部分はすぐに出てくるかもしれませんが、強みは見つけにくいかもしれません。強みを知っている人にはそれを生かして活躍するだけの準備が整っているとも言えますので、自分の弱点は裏返して強みを見つけましょう。弱点を強みに言い換えてみることで、今の自分を受け入れることができるようになります。

6-3.自己効力感を高める

自己効力感とは問題を解決したり外部世界を自分でコントロールできるようになる力を身につけることを言い、やればできると自信を持つ力のことです。自己効力感が高くなれば困難に直面した時にもひるむこと無く勇気を持って行動でき、失敗からも価値を見出して新たな行動を起こすことができます。小さな成功体験を積み重ねることで養われますが、成功している人を手本として真似することでも形成されていきます。上司が部下を叱咤激励することでも自己効力感は高まっていきますが、すぐに低下しやすいとも言われます。持続的に高揚させるためには結果が出るところまでサポートすることが大切です。自己効力感が高くなればビジネスを離れた場面でも成長する要因となると考えられています。

6-4.楽観性を持つ

困難な事案に直面すると自分に本当にできるのかと不安になることがあります。一度失敗するともう自分には解決できないだろうと悲観的に考えがちにもなります。そんなときでも、いつかできる、きっとできる、と楽観的に考えられればストレスは脅威ではなくなります。ストレスの原因が自分でコントロールできるものなのか、そうではないのかが判断できるようになり、今の失敗は自分がさらに成長するための挑戦なんだと前向きに考えられます。楽観性を持つことで不安を払拭し、自分ならできると自信を持つことにつながります。

6-5.良好な人間関係を築く

日頃から信頼できる仲間を作り、つながりを持つことは重要です。ネガティブに考えがちな時に、その思考を正しい方向に導いて自分を肯定してくれる人がいることは大切ですし、仮に何もせずにそばにいてくれるだけでも救われることはあります。自分を変えることと同じくらい、周囲のサポートによって得られる精神回復や成功体験は重要です。心を許して信頼しあえる仲間がいることは、前を向いて歩いていけるようになるための貴重な財産です。
 

レジリエンスを高めることでピンチをチャンスに変えられる

困難に直面した時にもうまく乗り越えて適応し、成長していく能力がレジリエンスです。逆境に対してもめげることの無い「打たれ強さ」を身につけることで、ピンチを逆にチャンスとすることも可能です。レジリエンスを高めてストレスに負けない精神を作り、感情をコントロールできるようになることで、よりよい人生をおくることができます。


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