日本弁護士連合会によると、わが国の弁護士人口は、4万0065人(2018年6月1日時点)で、ここ10年間で約1.5倍に増えています。急激な大量増員で、買い手市場となっている法律業界において、顧客を獲得する競争力を維持するには、どのような方策が必要でしょうか?

リーガルテックと呼ばれるITテクノロジー

エスカレートする顧客獲得合戦の中で、競争力を失わないためには、急速に進展するIT技術による業務支援システムの活用に乗り遅れないことが必要です。法曹界においても、現在では、依頼者や相手方弁護士とのメールによる連絡や書面のやりとりは当たり前に行われていますが、保守的な司法の世界では、90年代には考えられないことでした。

しかし、今日では、ネット上での広告宣伝、メールによる法律相談も、多くの法律事務所が導入しています。政府も、民事裁判手続きのIT化をめざしています。2017年10月、内閣官房は「民事裁判手続きのIT化を推進するための有識者検討会」を設置しました。

その内容は、インターネットを利用した裁判所への書類の提出、訴訟記録の電子化、テレビ電話による会議、オンラインでの訴訟費用納付といった程度でしたが、IT化への意識を持つに至ったことは進歩です。さらに、2018年3月には3つのe(e提出、e事件管理、e法廷)の観点から、実現を図っていくことが提言されました。

また、そうした動きに先んじているのが、「リーガルテック」の進歩です。リーガルテック、すなわち、「法律サービスを提供するためのITテクノロジー」の分野が、近年、非常に注目を集めています。実際、日本経済新聞(2018年2月19日)によると、企業法務案件を担当している弁護士に対してアンケートを行ったところ、このリーガルテックの活用に前向きな弁護士が、約7割弱を占めたと報道されています。

さらに、アメリカでは、破産法の分野において、「Ross」なる名称のAIが大手法律事務所に導入されて、膨大な裁判例などの中から、質問に対する的確な解答を行うようになったという報告があります。このAIは、学習しながら解答の精度も向上させる能力があり、弁護士のリサーチ業務が大幅に省力化できるといわれています。

フォレンジック技術の活用

このようなリーガルテックの例として、もう1つ紹介します。それは、フォレンジック(Forensics/フォレンジクスともいう)技術です。これは、捜査や民事事件において、パソコンなど電子機器に蓄積された記録を収集し、分析して法律的な証拠とする技術です。
パソコン、サーバー、携帯電話、スマートフォンなどのデジタル機器に蓄積された膨大なデジタルデータの中から、当該事件の証拠となるデータを割り出して抽出する技術、データが改ざんされたり、捏造されたりしたものではないかどうかを検証する技術、隠滅された証拠データを復元する技術などです。

このフォレンジック技術のひとつとして、「ディスカバリー」(「電子情報開示」または「電子証拠開示」)というものがあります。アメリカの民事訴訟では、当事者は、事件に関連する全情報の開示を相手方に求めることができます。原告、被告を問わず、相手の適法な要求に応じて、パソコンなどに保存された関連する全データを、指定された期限内に提出する義務があります。仮に、日本企業が訴訟当事者となれば、アメリカ国内だけでなく、日本国内に保存されたデータも対象です。検索対象となるデータは膨大であり、選別、抽出の作業は、人力だけでは信じられないほどの労力がかかります。しかし、この義務に応じなければ、敗訴などの大きなリスクを負うことになります。そこで、データの中から、証拠となる適切なデータを選別、抽出すること、無関係な情報、まして機密情報を流出させないように選別すること、さらにデータの改ざんを疑われないよう、その真正を担保することなど、さまざまな技術、ノウハウが提供されています。

クラウド上で契約が完結するサービス

最後に、すでに日本で行われているものに、「クラウド契約書」とでも呼ぶべきサービスがあります。クラウド上で契約書の作成を行うサービスです。PDFの契約書をアップし、メールなどでのやりとりを経た上で、双方が合意すれば、クラウド上で、電子的なサインと押印を行うシステムです。書類の郵送などの物理的なやりとりの手間と時間をカットし、調印作業を著しく省力化することが可能となります。

法律業務は、業種としては、ITと親和性が高いものです。今後も、ITを活用した便利なサービスが続々と生まれるでしょう。ITを使って集客するだけでなく、リーガルテックを活用した省力化やコストダウンによって、高い競争力を持つことが要求される時代となったのです。

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