職場で「リーダー」と呼ばれる人、「リーダー」としての役割を担う人には、大きく分けると2つのタイプがあります。

1つ目は、役職や地位でそのままリーダーとして扱われるべき人、そして2つ目は、本人がリーダーとしての資質を持っている人です。よく「あの人ってカリスマ性があるよね」などと言われるのがこの2つ目のタイプですね。人が自ずとリーダーに従うのは、無意識にもそのリーダーのパワーを認識しているからと言えます。であればこそ、集団がひとつの個体のように機能していくのです。

心理学者のJ.R.P.フレンチとB.レーベンは、そのリーダーのパワーを6つに分析して説きました。上記1つ目に当たるのが、強制的パワー、報酬的パワー、合法的パワー。そして2つ目に当たるのが、人間的パワー、情報的パワー、専門的パワーです。
 

1. 「役職や地位でそのままリーダーとして扱われるべき人」が持つパワー

1-1. 強制的パワー(Coercive power)

文字通り、命令に強制的に従わせるパワーです。信頼関係の上に成り立っているものとはほど遠いものです。体が大きく腕力の強い子どもがガキ大将として君臨するのもこのパワーによるものです。本来は決して長期にわたり影響力を持つべきものではありませんが、職場では上下の関係がほぼ変わらぬままずっと過ごすわけですから、これを振りかざす上司の下についた部下は遅かれ早かれストレスを抱え込むことになります。

また、職場では、人事や報酬に決定権を持つ者がその分野でこのパワーを持つこともあります。

1-2.報酬的パワー(Reward power)

どのような報酬をどれだけ与えるか、その権利を有する者が持つパワーです。職場で言えば給与査定や人事査定の権利を有する者が持っているパワーと言えます。一般的な人間関係では、「あの人といると、新しい友達をどんどん紹介してもらえる」「おいしいお店に連れて行ってくれる人」などということも、この“報酬的パワー”に当たります。体も小さく非力な子どもがたまにガキ大将を従えていることがあるのは、物的に恵まれた子どもがこのパワーを上手に使っている例と言えましょう。

1-3.合法的パワー(Legitimate power)

“強制的パワー”とよく似ていますが、少し異なります。地位や役職などから発生するパワーです。要するに、ガキ大将も学校の先生や警官には歯向かえないというわけです。

職場なら、課長より部長、部長より専務、専務より社長の方が、より強く大きいパワーを持っているという至極当然の図式です。たまに、役職とは逆転現象の序列を目の当たりにすることがありますが、その場合、つまり、この“合法的パワー”よりも強く影響する、何らかの他のパワーが働いていると考えると自然でしょう。

さて、ここまで読み進めてきて、ほとんどの方が恐らくお気付きかと思いますが、これら既出の3つのパワーが発揮されている組織というのは、後進的な、古い体質の組織と言えます。これが組織として成熟し発展してくると、これから挙げる3つのパワーが影響力を持つようになります。
 

2.本人がリーダーとしての資質を持っている人が持つパワー

2-1.人間的パワー(Referent power)

文字通り、その人の資質、人間的な魅力の部分です。前出のような「カリスマ性がある」と言われるタイプや、よく言われる「人徳がある」「顔が広い」などはこのパワーと言えます。何だかわからないけれど、招き猫でも飼っているみたいに人がよく集まってくる人っていますよね。

2-2.情報的パワー(Information power)

情報そのものや情報源を持っていることから生まれるパワーです。従って、“人間的パワー”を持っている人の多くは“情報的パワー”も兼ね備えていることになります。少し前のテレビコマーシャルで、一番下っ端と思われる社員が、取引先のキーマンと釣り仲間だったとかカラオケ仲間だったとかいうシチュエーションのものがありましたね。それもこの“情報的パワー”です。それがわかった途端に、下っ端だった社員は、そのプロジェクトにおいてはリーダー的な存在として輝き始めます。

2-3.専門的パワー(Expert power)

その分野において高い技術や深い知識を有していることから生まれるパワーです。ゼネラリストとしてリーダーの資質を持つかどうかは他に組み合わせて持っているパワーによりますが、少なくともその専門分野においては強いパワーを発揮します。部長や課長がエキスパートに指示を受けている、或いは、エキスパートに意見を仰いでいる、というような光景は珍しくありません。

さあ、更に読み進めて、勘の良い方はまたお気付きでしょう。外的要因によるものは、実は、上の6つのうち1つしかないのです。即ち、“合法的パワー”です。それ以外は自分の努力で変えられる=叶えられるものです。必ずしもリーダーとして力を発揮したいときばかりではありません。職場を自分にとって過ごしやすく働きやすい場所にする、人間関係を円滑にする、など様々に、大いに役立ってくるパワーと言えます。特に後半の3つのパワーを意識して、パワフルなビジネスパーソンを目指しましょう。

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