近年では、社会における女性の活躍に注目が集まっています。

安倍政権は「アベノミクス」と称する成長戦略の一つとして、女性の活躍推進を掲げています。平成26年7月に内閣府男女共同参画局が発表した「成長戦略としての女性の活躍推進」という資料によると、平成25年6月14日の閣議で2020年までに「指導的地位に占める女性の割合を少なくとも30%程度に」「25〜44歳の女性就業率を73%に」ということが決められました。

女性を積極的に雇用するなど男女雇用機会均等法の導入に積極的に力を入れることは、企業にとって多くのメリットがあります。今回は、その理由についてお伝えします。

女性が採用されにくい理由とは?

どうして女性は男性に比べて採用されにくいのでしょうか。そもそも日本では昔から、夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだという考えがあります。また、日本の大企業の多くは終身雇用を目指しています。同じ程度の能力を持った女性と男性がいた場合、いずれ出産や育児で長期休暇をとる確率が高い女性よりも、男性を選ぶ傾向が強いということなのでしょう。

20代後半から30代の女性は、結婚や出産など人生の転換期が多く、出産を考えると重要な仕事は任せられないと考えられているようです。その反面、社会人としての経験をある程度積んで、活躍の幅が広がる年齢でもあります。そのため、出産をした後でも社会復帰を望んでいる女性が多いのです。

またバブル崩壊後、大企業でも倒産や企業同士の合併が増えているなか、賃金も低迷し、現在では結婚した後でも経済的な理由から就業継続を望む女性も多く、共働きの家庭も増えてきました。

女性を採用すべき理由は?

女性を採用することによって、企業にとってもプラスの効果がもたらされます。ここでは、その理由をいくつか紹介しましょう。

  • 高学歴の女性が多い

新経済連盟主催で開催された「新経済サミット2015」で、Women's Startup Lab代表取締役の堀江愛利氏は、「実は日本は大学卒の女性の率が世界で3番目に多い」とスピーチしました。また、2014年の経済協力開発機構(OECD)によると、日本の高学歴女性の約3割は就労せず、2012年に発表された加盟国など世界38の国と地域を対象とした女性の就業率ランキングの順位は13位でした。

人口の減少と高齢化によって就労人口は減り続けているのにもかかわらず、高学歴であるのに就労していない女性がいるという現状は非常にもったいないことです。OECDでも「人材のかなりの部分が活用されていない」と指摘されており、この問題の解消が求められています。

  • 商品を購入する人は、半分が女性

総務省統計局によると、平成26年10月1日現在の日本の人口は127,083千人、その内女性は65,282千人になります。つまり市場における消費者の半分は女性なので、商品展開などを行う場合には女性の視点にもとづく意見が重要となってきます。
女性をメインターゲットにした化粧品などは別として、男女兼用の一般的な商品に関しては、女性の意見を反映し、開発する余地がまだ残っています。実際に、これまでも日産自動車の「ノート」やパナソニックの「パナソニックビューティ シリーズ」、日本コカ・コーラの「い・ろ・は・す」などが、ヒット商品となっています。
今後もさまざまな業種において、女性の視点が重要となっていくことでしょう。
 

  • 女性の管理職がいる企業の方が、業績が良い

上記でも述べましたが、政府は2020年までに女性管理職の割合を30%程度に引き上げるという目標を掲げています。しかしこの取り組みは女性の活躍推進というだけではなく、企業にとってもメリットがあることなのです。

日興フィナンシャル・インテリジェンスが調査研究した結果によると、米国ヘッドハント大手のコーン・フェリーとシンガポール国立大学(NUS)経営大学院は、アジア10 カ国の大手1,000企業の女性取締役比率と財務パフォーマンスの関係を調査し、女性取締役が全体の10%未満以上の企業は ROA(総資産利益率)が 5.6%、ROE(自己資本利益率)が 11.8%であったのに対し、10%以上の企業はそれぞれ6.9%、15.4%といずれも高いパフォーマンスであったと2015 年3月6日に調査結果を公表しました。ほかにもMcKinsey&Company やCredit Suisse Research Institute、Catalystなども女性の管理職について調査し、いずれの調査もメリットがあるという結果が出ています。

女性を積極的に採用し、企業のレベルアップをはかりましょう

海外では、IT企業や起業したばかりの会社では男性ばかりの環境になってしまう傾向が強いようです。しかし日本の場合は、起業したばかりではない企業でも男性が社員数の割合のほとんどを占めていることが多いようです。

カーネギーメロン大学テッパー・スクール・オブ・ビジネスのアニタ・ウーリー助教授と、MITスローン・スクール・オブ・マネジメントのトーマス・W・マローン教授は、女性メンバーの数を増やすとチームの集団的知力が高まることを明らかにしました。

これらから分かることは、男性と女性のバランスです。男性ばかり、女性ばかりのチームでは成果はなかなかでません。男女の比率が適正であるかを企業側が見定め、男性・女性独自の感性を持ち込んで相乗効果を得るようにすれば、企業のレベルアップが図れるのではないでしょうか。