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2017年給与調査:台頭する国内ブランド

アジアを本拠地とする企業が、従業員のための価値提案 (EVP)に関してより競争力を高めつつあります。
アジアの多様な市場で、優秀な人材を獲得する競争がかつてないほどの激しさで展開されています。これまで国内ブランドは、求職者の好みという点では、海外を拠点とする多国籍企業(外資系企業)に太刀打ちできませんでした。しかし昨今、国内ブランドが外資系企業と互角に戦えるようになってきたのです。
唯一の例外は、日本であるように思われます。日本にはトヨタやパナソニックといった企業がありますが、世界有数の多国籍企業で働くよりも、そうした国内の一流企業で働くことがステータスであり、安定していると日本では考えられています。国際経験を積みたいと思っている人でも、外資系企業ではなく、国内企業に就職した上で海外に派遣される道を選ぶことが多いのです。
日本以外では、多くの人材がアジア各地の国内ブランドの勃興とグローバル化に目を向け始めています。国内ブランドに就職することに将来性と利点とを見出すようになったのです。
特に中国では、さまざまな国内ブランドが登場してきています。これらの企業は、自力で多国籍化を果たし、世界の注目を浴びるようになりました。Forbes誌の「アジアで最も収益力が高い優良企業50社 (Asia’s Fab 50 Companies)」ランキングに入った中国企業は、インターネット通販最大手のアリババやオンライン旅行代理店のCtripを始めとする、21社にのぼります。また同ランキングには、香港、台湾、タイ、インドネシア、マレーシアといった国の企業も含まれています。
成功と課題
国内ブランドが成功を手にするためには、製品やサービスを市場の需要に合致させること、また社員がその市場をよく理解しているように、現地の人材を活用すること、といった点に留意する必要があります。
しかし多くの企業は、国際的な視点を持ち、現地の市場をよく理解し、十分な語学力もあるといった人材を採用するのに、大変苦労しています。国内で成功を収めた企業は、海外に進出したり、IPO (新規株式公開)に乗り出したりしようとしますが、そのような時の人材採用はさらに一歩先を見て行わなければなりません。アジア市場に造詣が深く、他地域でも経験を積んでいるような人材であることが好ましいのです。
これまで国内ブランドは、採用候補者に自社の魅力をアピールするために、さまざまな努力をしてきました。より国際的な企業文化を醸成し、報酬や福利厚生を充実させ、プロジェクトや業務管理過程をより明視化するといったことです。中国ではこのような手法が定着しつつあります。調査対象となった中国国内の雇用主の44%が、6~10%の昇給を実施するとしていますが、外資系企業の46%に匹敵する値となっています。
人材採用で大きな成功を収めている企業には、2つの特徴があります。まず、求める職種に最適な人材をうまく採用できているということがあります。最適というのは、正しい技能を持ち、企業の理念を共有できている人材という意味です。さらに、自社が必要とするような人材に声を届けるには、どのようなプラットフォームを利用するのが最も効果的か、正確に見定めることができているのです。
最適な人材を採用するための3つの秘訣
1. 企業理念・文化をアピールする
貴社の企業文化はチームワークを重視するのでしょうか、競争心を重視するのでしょうか。あるいは、カスタマーサービス、創造性、イノベーションを重視するのでしょうか。企業理念をアピールすることで、同様の傾向を持つ人材を呼び込みやすくなります。結果として、貴社に最適な人材を見つけやすくなるでしょう。
2. 従業員のための価値提案 (EVP)に説得力を持たせる
優秀な人材は、貴社が他社より優れているのはどういった点なのかを知りたいと思っています。企業として何を重視しているのか、どのようにして評価され、報酬が受けられるのか。貴社のウェブサイトやPR活動(広報)、そして口コミまで、さまざまな手段を活用して、このような面での貴社の特長をアピールしていきましょう。
3. 柔軟な発想で臨む
優秀な人材は往々にして他の業界に属しています。移転可能で強力なスキルを持っているような、高い実力を誇る人材は、適切な研修さえ受けられれば、他の業界にもうまく適応できる場合がほとんどです。斬新かつ革新的な視点を貴社に持ち込み、事業の発展に貢献してくれる可能性もあります。