DEIの基本的な概念は?D&Iから変遷した背景も紹介

経営理念として多くの企業が取り組みを公表しているD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)。「多様性」と「受容」を意味するD&Iは、個々の違いを受け入れて認め、活かしていくことを定義としています。さらに、D&Iを発展させた形として「エクイティ(公平性)」を加えたDEIも注目され始めました。そこで今回は、DEIの基本的な概念やD&Iから変遷した背景についてご紹介します。

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1.DEIとは

個々の違いを認め受容し、それぞれが持っている良いところを活かすD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を経営戦略の重要課題とする企業が増加しています。さらに欧米では、D&Iを発展させた概念としてDE&I(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)が注目され始めました。

DEIとはダイバーシティエクイティインクルージョンの頭文字から付けられ、その名の通り多様性公平性包括性を理念に掲げています。持続可能な社会実現に向けて世界的に急速に拡大してきた取り組みであるDEI。国内の各企業でもDEIの重要性に対する理解が深まりはじめ、特に外資系企業やIT企業では取り組みに積極的な事例が多く見られます。

D&IおよびDEIの考えが取り入れられるようになった背景には、2000年以降の労働人口減少や構成の変化があります。労働力の確保が企業にとっては喫緊の課題となったため、それまで労働力の中心とは考えられていなかった女性や障がい者、シニア、外国人労働者の雇用を積極的に行うようになってきたのです。

DEIは幅広い人材雇用を推進するため、企業経営に多彩な価値観を取り込むことが可能です。例えば宗教や文化の違い、職歴や生活背景などが画一化されないため、組織内の発想やアイディアが豊かになります。新たな価値観を認識することにより、結果的に企業の活性化や成長、さらに個々のスキルアップや、従業員定着率が上昇へとつながる好循環が実現。さらに、DEIは経営戦略の一つとして活用できるということもメリットです。DEIに取り組んでいる企業は社会的に高く評価されるため、ビジネスシーンにおいて優位に働く事例が多く見られます。このように、DEIを導入するメリットは企業と従業員の双方にもたらされると言えるでしょう。

2.ダイバーシティとは

ダイバーシティを直訳すると「多様性」で、それぞれの個性を尊重し受け入れ、お互いの良さを認め合うという意味を持っています。グローバル化していく中で、社会を構成する人々の人種や国籍、民族、年齢、性別、性的指向・性自認、教育、疾病、言語、障がいなども多様化してきました。そのため、それぞれのライフスタイルや幅広い個性を受け入れることの重要性が増してきています。あらゆる立場や状況の人が独自の能力を発揮し心身ともに健やかに生活できる風土・社会を形成することが次世代を切り開き、持続可能な社会実現へつながっていくのです。

さらに、組織社会において一人ひとりの多様性を認め合い、かつ尊重しあうことで、新しい視点でのイノベーションが生まれやすくなるということもダイバーシティのメリットと言えるでしょう。世界的取り組みとしてスタートしたダイバーシティは、日本においても、人種、宗教、価値観、性別、障がいの有無、ライフスタイルなどに多様性を認める動きが見られるようになり、社会全体に浸透・深化し始めています。

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3.インクルージョンとは

インクルージョンを直訳すると「受容・包括」という意味があり、企業においては従業員一人ひとりが「組織を構成する仲間」という帰属意識を持って取り組み、かつ個々の仲間を認めながら一体感を持って働いている状態を指します。様々な個人や集団を歓迎・評価し、さらに支援される環境を作るインクルージョンの取り組みは、誰もが安心感を持って意思決定のプロセスに参加できるというメリットがあります。

インクルージョンの対象となるのは人の属性なので、従業員の個性を認めて活かせる環境作りやマネジメントが必要となります。特に、会社の幹部だけでなく上司や同僚にも支持され評価されていると感じられることが重要です。身近な仲間から評価されることでさらに帰属意識が高まり、従業員のエンゲージメント向上、離職率の低下につながっていきます。インクルージョンを取り入れなければ、多様性を認めるダイバーシティの効果を充分に発揮できません。価値観や文化的相違などに対して周囲の理解や受け入れを伴っていない状態では、個人が最大限の能力を発揮できない可能性があります。

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4.エクイティとは

エクイティは「公平性」という意味があり、さまざまな情報や機会、リソースへのアクセスを公平に保証するという考え方です。エクイティとは、企業や組織が一人ひとりの立場や生活環境・性別などの違いをあらかじめ考慮し、個々が抱えた不均衡を是正していくという取り組みとなっています。

スタートラインに立った時点で不平等な状態であることを前提としているエクイティは、従業員を同時に複数名受け入れたとしても同様の働き方や成果を求めるわけではありません。まずは、必ず不利な状況にある人のバリアを取り除く取り組みをします。例えば、小さい子どもがいる人などは、子どもの状況に合わせて緊急で早退や遅刻、または休日を取得することなども考えられます。そのほかにも、生理休暇を取得したい女性もいるでしょう。このようなケースでもそれぞれの立場に立ち、働き方を考慮することで皆が働きやすい環境を整えていくことがエクイティの取り組みです。

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5.イコーリティとエクイティの違い

エクイティと似た言葉には、イコーリティ(平等性)があります。エクイティとイコーリティは一見すると似た意味を持つようですが、実際は「似て非なり」の言葉なので同様に用いてはいけません。

まず平等性とは、個々の状況を考慮せず全ての人に対して一律にツールやリソースを与えることを言います。一方、公平性は、一人ひとりの状況に配慮しながらそれぞれの状況に合わせてツールやリソースを用意することで、誰もが成功できるようにすることです。他の人と同じ機会を与えられたとしても活用できない理由を持つ不利な状況の従業員に対してエクイティを用いると、それぞれが抱えた状況を考慮し、追加支援ができます。

エクイティがなければダイバーシティとインクルージョンの効果を発揮・推進していくことがうまくいくとは限りません。まずは、企業活動において制度の現状を分析し、さらに格差が生じている根本原因を解決していくことがエクイティを満たすためには必要です。
 

6.なぜD&IからDE&Iに変遷していったのか

D&IからDE&Iに変遷していった背景には、差別をなくして平等にするだけでは解決不可能な社会的不平等な構造が認識されてきたことがあります。一例として、ある哲学者の著書に記された内容を挙げてみます。その中では、ハーバード大学の学生の3分の2は所得規模の上位5分の1に入る高所得層の家庭出身であることが記され、低所得者層の家庭の子供とはスタート地点から公平性が保たれていないことが指摘されています。つまり、低所得の家庭に生まれることで、学資援助などが充分に受けられないことなどから、努力したくても努力できない環境からスタートせざるを得ない人がいるということです。

しかし成功者は、自分の努力と実力の結果得た現状であり、成功を享受できて当然と認識し、スタート地点が違うことに意識が向いていないことが少なくはありません。対して、成功できなかった人は、現状は自分自身の努力不足により招いた結果だと考えてしまいます。このような認識が広がることで、社会的格差はさらに加速していきます。

日本においても、世代を超えて格差が継承されていくことが指摘され始めました。加えて、コロナ禍によって一層社会的格差が広がりつつある中、エッセンシャルワーカーが社会を支えていることにも気付かされ、エッセンシャルワーカーの存在あってこそ社会が機能していることをそれぞれの立場で再認識した状況にあります。このような情勢のなか、エクイティの概念がより重要視されるようになってきたと言えるでしょう。
 

企業と従業員の双方にメリットをもたらすDEIの概念

DEIの概念は、企業と従業員の双方に多くのメリットをもたらします。一人ひとりの個性を認めて受け入れ、尊重していくという理念のもとD&Iは多くの企業が取り組んできました。スタート地点で不利な立場にある人に対し追加支援を与え、誰もが等しく活躍できる機会を作ろうというDEIの考え方は、より本質的に多様性を推進するための柱となっていくでしょう。
 

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